こんにちは。デジタルバイクライブラリー、運営者の「ゆう」です。
ハンターカブを手に入れたものの、自分だけのスタイルにするにはどんなパーツを選べばいいのか迷っていませんか。
お店に頼むと工賃はいくらかかるのか、自分で取り付けて失敗したらどうしようと不安になることもありますよね。
また、マフラー交換やフォグランプの増設をする際に、車検のない125ccクラスとはいえ法規や保安基準を守らないとトラブルになる可能性もあります。
この記事では、私が実際に調べたり経験したりした知識をもとに、ハンターカブのカスタムにおすすめのパーツや、失敗しないための選び方について詳しく解説していきます。
- JA65とJA55の型式違いによるパーツ適合の注意点
- ツーリングを快適にする積載と操作性の向上パーツ
- 法規を守った安全なライトやマフラーの選び方
- プロショップへの持ち込み工賃と費用の目安
ハンターカブのカスタムでおすすめの適合と基本

まずは、愛車のハンターカブをいじる前に絶対に知っておきたい基本知識から解説します。特に年式による違いや、作業をお店に依頼する場合の費用感は、パーツを買ってから後悔しないためにとても重要です。
JA65とJA55の違いとパーツ互換性
たった一つの型式確認ミスが、数万円ものパーツ代を一瞬にして無駄にしてしまう恐怖をご存知でしょうか。
ハンターカブ(CT125)のカスタムを考える際、最も基本的でありながら最も多くのユーザーが陥る罠が、この「型式の違いによるパーツ適合問題」です。2020年に鮮烈なデビューを果たした初期型「JA55」と、2022年末のマイナーチェンジによって登場した現行型「JA65」。一見すると瓜二つのこの二台ですが、実は中身に関しては「全く別のバイク」と言っても過言ではないほどのドラスティックな変更が加えられています。
最大の違いはエンジンの設計そのものです。JA65型では最新の排出ガス規制(令和2年排出ガス規制)に対応するため、スーパーカブC125やダックス125と同系統の新型ロングストロークエンジンが採用されました。これにより、シリンダーのボア・ストローク比が変更されただけでなく、クランクケースの形状、エンジンマウントの位置、オイルフィルターの新設に伴うカバー形状の変更など、物理的な寸法が大きく変わっています。この変更は、エンジン周りに取り付けるパーツ、特に「マフラー」「エンジンガード(アンダーガード)」「シフトガイド」といった人気カスタムパーツの適合に致命的な影響を及ぼします。
例えば、JA55用に開発されたフルエキゾーストマフラーをJA65に取り付けようとしても、エキゾーストパイプの取り回しやステーの固定位置が微妙に異なるため、物理的に装着できないケースがほとんどです。無理やり付けようとすれば、スイングアームやブレーキペダルに干渉し、走行中に重大な事故を引き起こす可能性すらあります。また、エンジン下部を守るアンダーガードに関しても、JA65ではオイルフィルターカバーが出っ張っているため、JA55用のガードを装着するとフィルターカバーに激突して破損させる恐れがあります。
ここがポイント:型式による主な違い
| 項目 | JA55(旧型) | JA65(新型) |
|---|---|---|
| エンジン | ショートストローク傾向 | ロングストローク化 |
| オイルフィルター | 無し(遠心のみ) | 有り(カートリッジ式) |
| リアキャリア | 黒塗装 | 黒塗装(形状微変更あり) |
| マフラー適合 | JA55専用 | JA65専用 |
さらに細かい点を挙げると、リアキャリアの形状も微妙に変更されており、一部のボックスベースやサイドバッグサポートが流用できない事例も報告されています。ネットオークションやフリマアプリで「ハンターカブ用」として安く出品されているパーツを見つけたとしても、すぐに飛びついてはいけません。
出品者が型式の違いを理解していない可能性もあるため、必ず「JA55用なのか、JA65用なのか」を確認することが、無駄な出費を防ぐ唯一の自衛手段です。メーカーの公式サイトやWebikeなどの大手通販サイトでは、適合情報が詳細に記載されていますので、ポチる前に一度深呼吸して、車検証(標識交付証明書)に記載されている自分の型式と照らし合わせる癖をつけましょう。
専門店の持ち込み取り付け費用と工賃
「ネットで安く買ったパーツを、近所のバイク屋さんに持ち込んで付けてもらえば工賃も安く済むだろう」そんな甘い考えが、実は想像以上の高額出費を招くことを知っていますか?
カスタムパーツを購入した後、多くのライダーが直面するのが「誰が取り付けるのか」という問題です。DIYで取り付けられれば工賃はタダですが、専用工具や技術が必要なパーツも少なくありません。そこで頼りになるのが「2りんかん」や「ナップス」「ライコランド」といった大手バイク用品店や、街のバイクショップです。しかし、ここで強烈に立ちはだかるのが「持ち込み工賃」という壁です。
バイクショップの利益構造は、基本的に「パーツの販売利益」と「作業工賃」の二本柱で成り立っています。そのため、Amazonや楽天などの外部サイトで購入したパーツを持ち込んで「取り付けだけ」を依頼されることは、お店側にとっては利益の半分を失うことを意味します。さらに、持ち込まれたパーツが粗悪品であったり、規格が合わなかったりした場合のトラブルリスクも負わなければなりません。こうした背景から、多くのショップでは持ち込みパーツの取り付けに対して、通常工賃の「1.5倍から2倍」、場合によってはそれ以上の割増料金を設定しています。
例えば、お店でマフラーを購入して取り付ける場合の工賃が5,000円だとしましょう。しかし、持ち込みの場合は倍額の10,000円、あるいは「持ち込み作業お断り」というケースも珍しくありません。ネットでマフラーが定価より3,000円安く買えたとしても、工賃で5,000円余分に取られてしまっては、トータルで2,000円の赤字になってしまいます。これでは何のためにネットで安く探したのか分かりませんよね。
持ち込み依頼時の注意点とマナー
- 事前の電話確認は必須:いきなり商品を持っていくのはNGです。必ず事前に電話で「車種」「パーツ名」「持ち込みであること」を伝え、作業の可否と工賃の目安を確認しましょう。
- 初期不良のリスク:持ち込んだパーツが初期不良で動かなかった場合でも、分解・取り付けにかかった工賃は請求されるのが一般的です。お店で買ったパーツなら交換工賃も無料になることが多いですが、持ち込みは完全に自己責任です。
- 断られても文句を言わない:繁忙期や整備士の人数によっては、自店購入の客を優先するために断られることがあります。これはお店の方針として尊重すべきです。
もちろん、全てのショップが高額なわけではありませんが、経済的な合理性を考えるなら、「パーツ代+工賃」の総額で比較検討することが不可欠です。個人的な経験則で言えば、マフラーやリアサスペンションのような大物パーツや、電装系のようなトラブルが起きやすいパーツは、多少パーツ代が高くても実店舗で購入し、取り付けまで一貫して依頼した方が、結果的に安く済み、かつ「作業保証」も付いてくるので安心感が段違いです。DIYに挑戦するのも素晴らしいことですが、自分のスキルとリスクを冷静に見極め、プロに任せるべきところは任せるという判断も、賢いカスタムライフの一部だと言えるでしょう。
シフトガイドで操作感を劇的に改善
ハンターカブのオーナーなら一度は経験があるはずです。交差点での信号待ちから発進しようとしたその瞬間、シフトペダルを踏み込んだ感触が「グニャリ」としてギアが入らず、後続車に煽られる恐怖を。
この特有の操作感の悪さ、いわゆる「シフトの渋さ」や「入りづらさ」は、実はハンターカブ(およびカブシリーズ全般)が抱える構造的な宿命に原因があります。カブのエンジンは車体の中央にありますが、シフトペダルは左側に配置されています。そのため、エンジン内部から左側へ向かって非常に長いシフトシャフトが伸びているのです。このシャフトが長ければ長いほど、ペダルを踏み込んだ時にテコの原理でシャフト自体がたわんでしまい(弾性変形)、力が逃げてしまうのです。これが、あの不快な「グニャッ」とした感触の正体です。
この物理的な欠点を、魔法のように解消してくれるパーツが「シフトガイド」です。G-Craft(Gクラフト)をはじめとする多くのメーカーから販売されており、今やハンターカブカスタムの「三種の神器」の一つに数えられるほどの超定番アイテムです。このパーツの仕組みは非常にシンプルかつ理にかなっています。アルミ削り出しの強固なブロックに高性能なボールベアリングを埋め込み、それをエンジンケースに固定することで、たわみやすいシフトシャフトの中間地点を「支える」のです。
シャフトを支える点(支点)が増えることで、踏み込み時のシャフトのたわみが物理的に抑制されます。その結果、ライダーがペダルに入力した力がロスなくダイレクトにシフトドラムへ伝わり、「カチャッ」「コクッ」という、まるで精密機械を操作しているかのような節度あるシフトフィールへと激変します。これは単に気持ちが良いというだけでなく、シフトミスの減少にも直結します。特に、林道走行やツーリングで疲れてきた時に、軽い力で確実にギアチェンジができる恩恵は計り知れません。
取り付けに関する豆知識
シフトガイドの取り付け自体は、ボルト2〜3本で固定するだけの比較的簡単な作業ですが、ここでも「JA55用」と「JA65用」の適合には注意が必要です。JA65型はクランクケースの形状変更に伴い、シフトガイドの取り付けボルトの位置が変わっています。間違った型式のものを購入すると絶対に取り付けられませんので、ここでも型式確認は最重要事項です。
価格も数千円から1万円程度と、マフラーなどの大物パーツに比べれば手頃でありながら、乗るたびに毎回操作する部分だけに満足度は抜群に高いです。「まずは何か一つカスタムしてみたい」と考えている初心者の方に、私が自信を持って最初に推したいのがこのシフトガイドです。スニーカーへのダメージも減りますし、何より走りのリズムが良くなることで、ハンターカブとの一体感がさらに深まること間違いなしですよ。
ハンドル周辺の剛性強化と振動対策
舗装路を走っている時は気にならなくても、砂利道に入った瞬間、ハンドルが暴れて恐怖を感じたことはありませんか?それは、あなたの腕の問題ではなく、ハンドル周りの「剛性不足」が原因かもしれません。
ハンターカブの純正ハンドルは、アップライトでリラックスしたポジションが魅力ですが、鉄製のパイプハンドルであるため、オフロード走行時のような激しい衝撃が加わると、どうしても微細なねじれや振動が発生しやすくなります。また、万が一転倒した場合、ブレーキレバーやマスターシリンダーが破損してしまうと、その時点で自走不能に陥り、山奥で途方に暮れることになりかねません。こうしたリスクを回避し、かつ快適性を向上させるために必須となるのが、ハンドル周辺の剛性強化とガード類の装着です。
まず真っ先に検討すべきは、ZETA(ジータ)などのオフロードパーツブランドからリリースされている「ハンドガード(特にアーマーハンドガード)」です。これは単なる風除けのプラスチックカバーではなく、高強度のアルミニウム合金で作られた強靭なフレームを、ハンドルバーの端とクランプ部の2点で固定する装備です。これを装着することで、転倒時に地面と激突してもレバー類が守られ、手が挟まれる怪我も防ぐことができます。また、フレーム自体がハンドルの剛性を高める補強材としての役割も果たすため、走行中のハンドルのブレが抑制され、カチッとしたダイレクトな操作感を得ることができます。
次に、ハンドルブレース(ハンドルクロスバー)の導入も非常に効果的です。これはハンドルの左右を橋渡しするように一本の棒を通すパーツですが、これがあるだけでハンドルの不快な微振動が驚くほど軽減されます。長距離ツーリングにおいて、ハンドルの振動は知らず知らずのうちにライダーの手首や肩に疲労を蓄積させ、手の痺れを引き起こす主要因となります。ブレースを入れることで振動の周波数が変わり、疲労軽減に大きく貢献してくれるのです。
ハンドルブレースの「隠れたメリット」
- マウントスペースの拡張:実は剛性アップ以上に重宝するのがこれです。スマホホルダー、USB電源、アクションカメラ、ドリンクホルダーなど、現代のツーリングには欠かせないガジェット類を取り付けるための「特等席」になります。
- ドレスアップ効果:アルマイト加工されたカラフルなブレースバーは、コクピット周りの視覚的なアクセントとしても優秀です。車体色に合わせてコーディネートするのも楽しいですね。
ただし、ハンドガードの取り付けには一点だけ注意が必要です。ハンターカブの純正ハンドルには、内部に振動を抑えるための「インナーウエイト」が溶接などで固定されている場合があり、ハンドガードを差し込むためにこのウエイトを取り外したり、ハンドル自体を社外品のアルミハンドル(ZETAのスペシャライズドハンドルバーなど)に交換したりする必要が出てくるケースがあります。この作業はグリップの交換やスイッチボックスの穴あけ加工などを伴うため、DIY難易度は少し高めです。不安な方は、ハンドル交換とセットでプロショップに依頼するのが、最も確実で安全な近道かもしれません。
電源確保とUSBパーツの取り付け配線
ツーリングの最中にスマホのバッテリーが切れ、地図アプリが使えなくなって迷子になる。現代のライダーにとって、これほど絶望的なシチュエーションはありません。
もはやスマートフォンのナビ機能はバイクライフにおける「インフラ」と言っても過言ではなく、その生命線となる電力を安定供給するためのUSB電源確保は、カスタムというより必須装備の一部となっています。しかし、ここで安易に「バッテリーに直接繋げばいいや」と考えるのは、車両火災やバッテリー上がりを招く極めて危険な行為です。バイクの電気には、キーがOFFでも常に電気が流れている「常時電源」と、キーをONにした時だけ電気が流れる「アクセサリー電源(ACC電源)」の2種類があります。USB電源などの後付けパーツは、必ずこのACC電源から取るのが鉄則です。
初心者の方に強くおすすめしたいのが、KITACO(キタコ)から発売されている「電源取り出しハーネス」です。これは、ヘッドライトケース内やオプションカプラーに割り込ませるだけで、純正の配線を傷つけることなく、安全かつ確実にACC電源を取り出すことができる神アイテムです。純正の配線を切ったり、ギボシ端子をカシメたりといった専門的な加工作業が不要になるため、電気配線アレルギーの方でも比較的安心して作業に取り組めます。
USBポート本体については、デイトナやキジマから出ているバイク専用品を選ぶのが正解です。これらは雨天走行を想定した防水キャップが付いており、振動による接触不良にも強い設計になっています。最近ではUSB Type-Cに対応し、PD(Power Delivery)による急速充電が可能なモデルも増えてきました。ナビアプリを使いながら画面の明るさを最大にしていると、従来の低出力なUSBポートでは充電が追いつかず、徐々にバッテリーが減っていくという現象が起きますが、PD対応モデルなら消費電力を上回る速度で充電してくれます。
配線作業の「落とし穴」
- アース不良:プラス側の配線は完璧でも、マイナス側(アース)の接触が悪いと電気は流れません。塗装面ではなく、金属が露出しているボルトに共締めするか、バッテリーのマイナス端子に戻すのが確実です。
- 配線の噛み込み:ハンドルを切った時に配線が挟まったり、引っ張られたりしないよう、十分な余裕を持たせてタイラップで固定しましょう。被覆が破れてショートすると、最悪の場合、メインヒューズが飛んでエンジンがかからなくなります。
また、グリップヒーターやフォグランプなど、消費電力の大きな電装品を複数取り付ける場合は、「D-UNIT(デイトナ)」のような電源管理ユニットを導入することをおすすめします。これを使えば、バッテリー周りの配線がごちゃごちゃにならず、ヒューズによる回路保護もしっかり行えるため、トラブル時の原因究明も容易になります。電気は見えない部分だからこそ、確実で安全な施工を心がけたいですね。
ハンターカブのカスタムでおすすめのツーリング装備

ここからは、ハンターカブでキャンプや遠出を楽しむために、さらに一歩踏み込んだカスタムについて紹介していきます。実用性とワクワク感を両立させるパーツ選びが楽しいところですね。
キャンプ積載に最強のリアボックス選び
「たかが箱、されど箱」。リアボックスの選び方一つで、旅の質は天国にも地獄にも変わります。
ハンターカブのアイデンティティとも言える巨大な純正リアキャリア。この広大なスペースをどう活用するかは、オーナーのセンスと用途が問われる最大のポイントです。市場には星の数ほどのリアボックスが存在しますが、大きく分けると「樹脂製(ハードケース)」と「アルミ製(アドベンチャーケース)」、そして「ソフトバッグ」の3派閥に分かれます。
まず、通勤通学や買い物、日帰りツーリングがメインなら、GIVI(ジビ)やSHAD(シャッド)に代表される「樹脂製ボックス」が最強の最適解です。丸みを帯びたデザインは空気抵抗が少なく、軽量であるためハンドリングへの悪影響も最小限。何より完全防水に近い密閉性があり、ヘルメットやレインウェアを放り込んで鍵をかければ、盗難や雨の心配から完全に解放されます。価格も1万円〜2万円台と手頃で、コスパ重視ならこれ一択です。
一方で、「俺はハンターカブで日本一周するんだ!」「キャンプ道具を満載して林道の奥地へ行くんだ!」というハードコアなユーザーには、ツアラテックなどの「アルミ製ボックス」が強烈に支持されています。四角く無骨なデザインはハンターカブのミリタリーテイストと完璧にマッチし、その堅牢性は転倒時の衝撃から中身を守ってくれます。天板がフラットになっているため、箱の上にさらにテントやマットを積載できる拡張性も魅力です。ただし、重量は樹脂製の倍近くあり、価格も5万円〜10万円オーバーと高額になります。
積載重量と「シミー現象」の恐怖
ここで物理法則の冷徹な事実をお伝えしなければなりません。リアキャリアの遥か後方、しかも高い位置に重い箱と荷物を積むということは、「テコの原理」でフロントタイヤを浮き上がらせる力が働くことを意味します。これにより、以下の現象が発生しやすくなります。
- シミー現象:手放し運転をした時などに、ハンドルが左右に激しくブレだす現象。減速時に特に起きやすくなります。
- 接地感の喪失:登り坂のカーブなどでフロントのグリップ感が希薄になり、曲がりにくくなります。
これを防ぐためには、重い荷物(水やペグ、ハンマーなど)は箱の中ではなく、センターキャリアやサイドバッグなどを活用して、できるだけ「低く、中央寄り」に分散させて積むことが重要です。リアボックスには寝袋や衣類など、嵩張るけれど軽いものを入れるのが積載の鉄則です。
ボアアップによる動力性能と排気量変更
「荷物を満載した登り坂で、軽自動車に煽られながら失速していく惨めさにはもう耐えられない。」
もしあなたがそう感じているなら、禁断の果実である「ボアアップ(排気量アップ)」に手を出す時が来たのかもしれません。ハンターカブのノーマルエンジンは125ccとして非常に優秀ですが、キャンプ道具で総重量が150kgを超えた状態での峠越えには、物理的な限界があります。SP武川やKITACOからリリースされている181ccボアアップキットは、この限界を力技で突破する最終兵器です。
181cc化の効果は劇的です。最高出力はもちろんですが、特筆すべきは圧倒的なトルクの向上です。今まで2速に落として悲鳴を上げながら登っていた坂道を、3速や4速のまま余裕で駆け上がることができるようになります。スロットルを開けた瞬間の「ドンッ」と前に出る加速感は、もはや別の乗り物。長距離ツーリングでの疲労感も大幅に軽減され、巡航速度に余裕が生まれることで精神的なゆとりも手に入ります。
しかし、この「力」を手に入れるためには、相応の代償と責任が伴います。まず、法的な区分が「原付二種」から「軽二輪(126cc〜250cc)」へと変更になります。これに伴い、以下の手続きが絶対に必要です。
ボアアップに伴う必須手続きリスト
- 役所での廃車手続き:まずは現在の原付登録を抹消します。
- 陸運局での新規届出:「軽二輪」として新たにナンバープレート(白ナンバー)を取得します。
- 免許の確認:「小型限定普通二輪免許」では運転できなくなります。「普通二輪免許」以上が必要です。
- 保険の切り替え:自賠責保険と任意保険の契約内容を変更する必要があります。特に「ファミリーバイク特約」が使えなくなるケースが多いため、保険料が跳ね上がる可能性があります。
さらに、エンジンへの負担も増大します。発熱量が増えるため、強化オイルポンプやオイルクーラーの増設といった熱対策が必須となり、クランクシャフトやクラッチへの負荷も増えるため、耐久性はノーマルと比較して確実に低下します。ハイオクガソリン指定になることも一般的です。「速さ」と引き換えに「耐久性」と「維持費の安さ」を犠牲にする覚悟があるか。ボアアップは、その天秤にかけられる覚悟を持った者だけが踏み込める領域なのです。
フォグランプ増設時の保安基準と視認性
真っ暗な林道で、ヘッドライトの光が届かないカーブの先にある「何か」に恐怖したことはありませんか?純正LEDヘッドライトは省電力で長寿命ですが、配光特性上、どうしても照射範囲のエッジがはっきりしており、コーナリング時に進行方向が暗闇になりがちです。
これを解決するのがフォグランプ(補助灯)の増設ですが、ここは警察の取り締まりや整備不良の指摘を受けやすい「法規の地雷原」でもあります。ただ明るければ良いというわけではなく、道路運送車両法の保安基準を厳密にクリアしなければなりません。
特に厳格なのが取り付け位置です。前部霧灯(フォグランプ)の場合、「照明部の上縁が地上80cm以下、下縁が地上25cm以上」さらに「最外側が車両の最外側から400mm以内」といった規定があります。ハンターカブの場合、ヘッドライト横に付けると高さ制限(80cm以下)に抵触する可能性があるため、フロントフォークの中間や、エンジンガードに取り付けるのが一般的で安全な配置です。
そして、最も重要なのが「光の色」です。保安基準では「白色または淡黄色」と定められていますが、実用性を重視するなら断然「黄色(3000k前後)」をおすすめします。これには科学的な理由があります。雨や霧の水滴、あるいは林道の土埃などは、波長の短い青白い光(6000k以上)を乱反射(ミー散乱)させやすく、目の前に白い壁があるような状態になり視界を奪います。対して波長の長い黄色い光は、粒子を透過して路面の凹凸を浮き上がらせる性質があるのです。
【重要】フォグランプの保安基準サマリー (出典:国土交通省『道路運送車両の保安基準』)
| 個数 | 3個以上同時点灯しないこと(通常は左右1対で2個まで) |
|---|---|
| 色 | 白色または淡黄色(左右同色であること) |
| インジケーター | 点灯していることが運転席から分かる表示灯が必要(スイッチにランプが付いているタイプなど) |
| 光軸 | 対向車や歩行者の交通を妨げないもの(下向き必須) |
最近のLEDフォグランプキット(SP武川製など)は、これらの基準を満たすように設計されており、スイッチにインジケーターが内蔵されているものも多いです。安価な汎用品を適当に付けると、車検のない125ccとはいえ、街頭検査で整備不良切符を切られるリスクがあります。「明るさは安全」ですが、「法規遵守も安全」の一部であることを忘れないでください。
吸排気系のチューニングとマフラー
エンジンをかけるたびに響く、心臓の鼓動のような低音。マフラー交換は、バイクという乗り物が持つ「官能性」を呼び覚ます儀式です。
ハンターカブのマフラー交換は、見た目のスタイルアップ効果も絶大です。純正のアップマフラーのスタイルを踏襲しつつ、より太く力強いデザインにしたヨシムラやモリワキ、SP忠男などの製品は、所有感を強烈に満たしてくれます。しかし、性能面で語るなら、マフラー交換は「吸気」とセットで考える必要があります。
エンジンは「空気を吸って、爆発させて、吐き出す」ポンプのようなものです。マフラーを変えて排気の抜けを良くしても、入り口であるエアクリーナーが詰まっていたり、吸入量が足りなければ、性能は上がりません。むしろ、抜けが良くなりすぎて低速トルクがスカスカになり、街乗りがしにくくなることさえあります。SP忠男の「POWERBOX」などは、エキゾーストパイプの途中に膨張室を設けることで、この低速トルクの落ち込みを防ぎつつ、高回転の伸びを実現している傑作です。
政府認証(JMCA)マフラーの重要性
公道を走る以上、必ず「政府認証プレート」が付いたマフラーを選んでください。これは騒音規制や排出ガス規制をクリアしている証明です。認証のないレース用マフラー(いわゆる爆音マフラー)は、近隣迷惑になるだけでなく、違法改造として取り締まりの対象になります。また、大手のバイク用品店では、認証プレートのないマフラーの取り付け作業は100%拒否されます。
さらにこだわるなら、エアクリーナーボックス内のフィルターを高効率なものに交換したり、ZETAのコンバージョンダクトなどで吸気経路を整流化したりすることで、マフラーの効果を最大限に引き出すことができます。ただし、吸排気を極端に変えると、空燃比(空気とガソリンの比率)が薄くなり(リーン状態)、エンジンが過熱しやすくなるリスクもあります。マフラー交換+エアクリ交換まで行うなら、i-map(キタコ)などのサブコンを入れて、燃調を少し濃いめに補正してあげるのが、エンジンを長持ちさせる秘訣です。
高機能メーターへの交換とエンジンの管理
もしあなたの体が熱を出して悲鳴を上げているのに、体温計がなかったらどうしますか?純正のメーターのままハードな走行を続けるのは、まさにその状態かもしれません。
ハンターカブの純正メーターはシンプルでデザインも良いのですが、表示される情報は「速度」「燃料」「オドメーター」程度と必要最低限です。しかし、これまで述べてきたようなカスタム(ボアアップ、吸排気変更、重積載での酷使)を行った車両において、エンジンの健康状態を把握するための「タコメーター(エンジン回転計)」と「油温計」、そして「電圧計」が無いのは致命的です。
OPMID(オプミッド)の「OPマルチメーター」や、SP武川の「スーパーマルチTFTメーター」は、純正メーターと全く同じサイズで完全ボルトオン交換が可能ながら、これらの情報を全て一画面に表示できるハイテクデバイスです。特に油温計は重要です。空冷エンジンであるハンターカブは、真夏の渋滞や低速での急な登り坂では、走行風が当たらずに油温が急上昇します。油温が120℃を超えるとエンジンオイルの性能が急速に劣化し、最悪の場合はオーバーヒートや焼き付きを起こします。メーターで油温が見えていれば、「ちょっと温度が上がってきたから休憩しよう」という判断ができ、エンジンを壊す前に守ることができるのです。
また、電圧計も地味ながら超重要です。グリップヒーターやフォグランプ、スマホ充電など、電装品をフル稼働させていると、発電量が追いつかずにバッテリー電圧が下がっていくことがあります。電圧計があれば、「信号待ちはグリップヒーターを切ろう」といった電力マネジメントが可能になり、出先でのバッテリー上がりという悪夢を回避できます。
取り付けは、フロント周りのカウルを全バラしにする必要があるため、それなりに手間がかかりますが、カプラーオン(配線加工なし)で付く製品が多いため、プラモデル感覚で挑戦できるレベルです。コクピットの情報量が増えると、まるで戦闘機のパイロットになったような高揚感が味わえるのも、このカスタムの大きな魅力ですね。
段階的な改造の進め方と優先順位
ここまで読んで、「やりたいことが多すぎて、いくらお金があっても足りない!」と頭を抱えているかもしれません。ご安心ください。カスタムは一度に完成させる必要はありません。むしろ、段階を踏んで一つずつ変えていく方が、それぞれのパーツの効果を体感できて楽しいのです。
私が推奨する「失敗しないカスタムロードマップ」は以下の通りです。
【STEP 1】快適性・利便性の確保(予算目安:1〜3万円)
まずは不満を解消し、ツーリングに行ける体勢を整えます。
- USB電源 & スマホホルダー:現代の必需品。
- リアボックス(センターキャリア):荷物が積めなければ始まりません。
- サイドスタンドプレート:不整地での駐輪安定性を確保。
【STEP 2】操作系・ガード類の強化(予算目安:3〜5万円)
距離を走るようになり、操作の不満やリスクが見えてきたら。
- シフトガイド:操作感の劇的改善。
- ハンドガード & ブレース:振動対策とレバー保護。
- フォグランプ:夜間走行や林道へ行くならこの段階で。
【STEP 3】動力性能・官能性の追求(予算目安:5〜15万円〜∞)
ノーマルの走りに慣れ、物足りなさを感じてきたら沼の入り口へ。
- マフラー交換:音と見た目の変化を楽しむ。
- リアサスペンション交換:乗り心地と追従性の向上。
- 多機能メーター:車両管理の高度化。
- ボアアップ:最終到達点。覚悟を決めてから。
重要なのは、自分の使い方(街乗りメインなのか、キャンプツーリングメインなのか)に合わせて優先順位を決めることです。見た目だけのカスタムも否定はしませんが、「走って快適になる」機能パーツから手を入れると、バイクに乗る頻度が増え、結果として長く楽しめる趣味になりますよ。
ハンターカブカスタムの「そこんとこどうなの?」Q&A

- ぶっちゃけ、ド素人でも自分でカスタムできますか?工賃ケチりたいです(笑)
-
正直なところ、「工具を持ってるか」と「壊す覚悟があるか」次第ですね(笑)。
例えば、USB電源を取り出すだけなら、カウルを外すのに少しコツがいりますが、YouTubeを見ながらやれば半日くらいでできると思います。ただ、しっかりした工具(ソケットレンチセットとか)を持っていないなら、結局工具代で工賃と同じくらいかかっちゃいます。
逆に、エンジン周りやブレーキ関係は、締め付けトルクを間違えると命に関わるので、そこは素直にプロにお布施しましょう。安心料だと思えば安いもんです! - マフラー変えたら速くなりますか?
-
夢を壊すようで申し訳ないですが、ポン付けだけだと「気持ち」速くなった気がする程度です!
実際には、音が良くなってテンションが上がるので、スロットルをいつもより開け気味になって「速い!」って感じるパターンが多いですね(笑)。
本当に速くしたいなら、記事でも書いた吸気系の見直しや燃調、最終的にはボアアップまでやらないと劇的な変化は感じにくいかも。でも、マフラー交換は見た目と音が最高にカッコよくなるので、それだけで交換する価値は十分アリですよ! - センターキャリアって便利ですか? 足に当たって邪魔になりそうで迷ってます。
-
これ、めちゃくちゃ聞かれます! 結論から言うと、「ニーグリップしようとすると邪魔」です(笑)。
ガニ股で乗るスタイルなら全く気になりませんが、真面目にニーグリップするとスネや膝の内側がゴツゴツ当たります。ただ、コンビニコーヒーを置いたり、ちょっとしたポーチを挟んだりする利便性と、何よりあの「道具感」あふれる見た目は捨てがたいんですよね。
私は見た目重視で付けてますが、傷防止のためにパッドを巻いたりして工夫してます。スタイルか快適性か、究極の選択ですね! - カスタムしまくると、売る時に査定下がりますか?
-
残念ながら、基本的には下がることが多いです。
特に配線を切ったり貼ったりしてごちゃごちゃになってると、お店側も嫌がります。一番賢いのは、「外した純正パーツを捨てずに取っておくこと」です!
売る時に純正に戻して、カスタムパーツはヤフオクやメルカリで売るのが、一番お財布に優しいサイクルですね。純正マフラーとかデカくて邪魔ですけど、未来のボーナスだと思って倉庫にしまっておきましょう(笑)。
ハンターカブのカスタムでおすすめの総括
ハンターカブというバイクは、ホンダが我々に提供してくれた「未完成の素材」だと私は思っています。ノーマルのままでも世界中を旅できるポテンシャルを持っていますが、そこにオーナー一人ひとりの知恵と工夫、そして愛情(とお金)を注ぎ込むことで、世界に一台だけの最高の相棒へと進化します。
カスタムに正解はありません。しかし、間違い(適合ミスや法規違反、危険な取り付け)は存在します。今回ご紹介した知識が、あなたがその間違いを避け、最短ルートで理想のハンターカブを作り上げるための一助になれば、これほど嬉しいことはありません。
さあ、次はどのパーツを検索しますか? ガレージで工具を握る週末が、待ち遠しくてたまらなくなる。そんな素敵なハンターカブライフを、心から応援しています!
