街で見かけるPCX(jk05)。
優れたバイクだからこそ、その他大勢に埋もれてしまうのはもったいないと思いませんか?
「自分だけの一台にしたい」その想いはあるけれど、無数のカスタムパーツを前にして、どこから手をつければいいのか途方に暮れてしまう…。
そんなあなたのための、失敗しないカスタムの羅針盤がここにあります。
一瞬で視線を集めるデビルマスクでのフェイスリフト、長距離ツーリングの疲れを癒す魔法のシート選び、そして信号待ちが快感に変わる駆動系チューニングの奥深い世界まで。
初心者でも安心して踏み出せる純正パーツの活用術から、究極のフルカスタムまで、あなたの理想を現実にするための全ての知識とアイデアをこの記事に詰め込みました。
さあ、あなただけのPCXを創り上げる、最高の冒険を始めましょう。
- PCX(jk05)における基本的なカスタムの方向性
- 外装や性能を向上させる人気パーツの種類と特徴
- カスタムを進める上でのメリット・デメリットと注意点
- 自分だけの理想のスタイルを見つけるためのヒント
見た目を重視するPCX(jk05) カスタム

- まずは定番のおすすめ カスタムから
- 人気のカスタムパーツで差をつけよう
- 顔つきが変わるデビルマスクの装着
- 明るさと印象を変えるヘッドライト周辺
- 足つきと快適性を向上させるシート交換
- 統一感を出す純正パーツの活用術
まずは定番のおすすめ カスタムから
PCX(jk05)のカスタムは、まさに千差万別。無限の可能性があるからこそ、最初に「どのような一台に仕上げたいか」という完成予想図を描くことが、満足度の高いカスタムへの第一歩となります。まずは大まかな方向性を定めるために、代表的な3つのアプローチについて、より具体的に掘り下げてみましょう。
見た目のドレスアップ
ドレスアップは、バイクへの愛着を深め、所有する喜びを最も感じやすいカスタムです。フェンダーレスキットでリアビューを軽快にするのは定番ですが、それに加えてADIO製の「ロングホイールベースキット」を組むと、車体が伸びやかに見え、全く異なるシルエットを生み出せます。また、足元の印象を大きく変えるキタコやエンデュランス製の「ステップボード」は、乗り降りの際に必ず目に入る部分であり、満足感が非常に高いパーツです。
さらに細部にこだわるなら、DAYTONAの「PREMIUM ZONE」シリーズのような高品質なアルミ削り出しのバーエンドやマスターシリンダーキャップに交換するのも良いでしょう。車体色に合わせたアルマイトカラーのパーツを散りばめることで、全体の統一感が生まれます。ミラーをナポレオンのスタイリッシュなデザインのものに交換するだけでも、ハンドル周りの印象はガラリと変わります。これらのパーツは比較的安価で交換も容易なため、カスタム初心者の方が最初に挑戦するのにおすすめです。
走行性能の向上
PCX(jk05)のeSP+エンジンは元々スムーズでパワフルですが、カスタムによってその潜在能力をさらに引き出すことが可能です。マフラーやリアサスペンションの交換は前述の通りですが、より深く踏み込むならブレーキ周りの強化も視野に入ってきます。純正のブレーキでも通常走行に支障はありませんが、社外品のブレーキパッドに交換することで、よりコントローラブルな制動力を手に入れることができます。さらに、ブレーキホースをステンレスメッシュタイプに交換すれば、ブレーキタッチがよりダイレクトになり、繊細なブレーキングが可能になります。
積載性・快適性のアップ
ツーリングや日常の利便性を追求するなら、快適性向上のカスタムは欠かせません。冬場の必需品であるグリップヒーターは、ホンダ純正品ならバッテリー電圧を監視する機能が付いており安心です。また、スマートフォンをナビとして使用するのが当たり前になった現代では、USB電源の確保も重要です。デイトナやキジマから、ハンドル周りにスマートに設置できる専用の電源取り出しハーネスとUSBポートのセットが販売されており、これらを活用すれば手軽に充電環境を整えられます。
前述のトップケースやロングスクリーンとこれらの快適装備を組み合わせることで、PCX(jk05)は長距離ツーリングも余裕でこなす、オールラウンドなツアラーへと進化します。
人気のカスタムパーツで差をつけよう
PCX(jk05)の魅力は、豊富なカスタムパーツによって自分好みに育てていける点にあります。ここでは、数多くのユーザーから選ばれ続けている、いわば「王道」とも言える人気パーツについて、その特徴や選ぶ際のポイントを詳しく見ていきましょう。
マフラー
マフラーはカスタムの華であり、多くのライダーが最初に手を加える部分です。メーカーごとに設計思想が異なり、性能やサウンド、デザインにそれぞれの個性があります。
メーカー | 代表製品 | 特徴 | 価格帯の目安 |
SP忠男 | PURE SPORT | 独特のループエキパイ(パワーボックス)が特徴。 低中速のトルク感を重視した設計で、街乗りでの気持ちよさは格別。 サウンドは歯切れの良い上品な低音。 | 60,000円~80,000円 |
BEAMS | R-EVO, CORSA-EVO2 | デザインの豊富さが魅力。ステンレス、チタン、カーボンなど材質の選択肢も多い。 シャープで現代的なスタイルを好むユーザーに人気。 | 40,000円~70,000円 |
SP武川 | パワーサイレントオーバル | 純正プロテクターが装着できるノーマルルックタイプも用意。 見た目を大きく変えずに性能とサウンドの変化を楽しみたい玄人好みの選択肢。 | 40,000円~50,000円 |
選ぶ際は、JMCA政府認証品であることを必ず確認してください。これにより、騒音規制をクリアし、安心して公道走行が楽しめます。
リアサスペンション
乗り心地に直結する重要なパーツです。純正サスはコストの制約から、特に段差を乗り越えた際の突き上げ感が強いと感じる方が少なくありません。
- キタコ製リアショックアブソーバー: 豊富なカラーバリエーションが魅力。スプリングのプリロード調整(無段階)が可能で、自分の体重やタンデム時など、状況に応じたセッティングが楽しめます。比較的リーズナブルな価格で、コストパフォーマンスに優れています。
- エンデュランス製リアサスペンション: ローダウンタイプもラインナップされており、足つき性を改善したい場合に最適です。乗り心地は純正に比べてしなやかになり、路面追従性が向上します。
取り付け難易度は中級レベルですが、適切な工具があればDIYも可能です。乗り心地の改善効果が非常に大きいため、満足度の高いカスタムと言えるでしょう。
フェンダーレスキット
リア周りの野暮ったさを解消し、一気にスタイリッシュな印象に変えるパーツです。
- ADIO製フェンダーレスキット: シンプルな構造で、純正のナンバー灯を流用するため配線加工が不要な点が魅力です。スリムリフレクターが付属しており、後方からの見た目が非常にスッキリします。
- ウイルズウィン製フェンダーレスキット: ナンバープレートの角度がややアグレッシブなデザインが特徴。ボルトオンでしっかりと固定できるため、走行中の振動などにも強い設計です。
注意点として、泥はねが純正状態よりも増える傾向にあるため、雨天走行が多い方はその点を考慮する必要があります。
顔つきが変わるデビルマスクの装着
バイクのカスタムにおいて、フロントフェイスの変更は全体の印象を決定づける重要な要素です。PCX(jk05)の精悍な顔つきを、さらにアグレッシブで唯一無二の存在へと昇華させるパーツ、それが「デビルマスク」です。
このパーツは純正ヘッドライトの上から覆いかぶせるように装着するFRP製またはABS樹脂製のカウルパーツで、装着するだけでノーマルの面影を残しつつも、全く異なる獰猛な表情を生み出します。特にコタニモータース製の「デビルマスク」は、そのデザイン性の高さとフィッティングの良さから、PCXカスタムシーンにおいて絶大な人気を誇っています。純正のボディラインを巧みに活かしながら、ヘッドライトの輪郭を鋭く絞り込むことで、まるでカスタムマシンビルダーがワンオフで製作したかのような、高い完成度を実現します。
デビルマスク装着のメリットと注意点
デビルマスクを導入する際のメリットと、事前に知っておくべき注意点を整理してみましょう。
項目 | 詳細 |
メリット | 圧倒的なデザイン性: なんと言っても最大の魅力は、その攻撃的で個性的なスタイリングです。 街中で他のPCXと並んだ際に、一目で違いがわかるほどの強い個性を放ちます。 手軽なイメージチェンジ: 車両の分解を最小限に抑え、比較的簡単な作業で取り付けが可能なため、短時間で劇的なイメージチェンジが図れます。 所有満足度の向上: 自分のバイクがより特別な存在に感じられ、乗るたびに高揚感を得られるでしょう。 |
注意点・デメリット | 光軸への影響: 製品のデザインによっては、ヘッドライトの照射範囲の最上部がわずかに遮られる(ケラれる)可能性があります。 夜間走行に大きな支障が出るレベルではありませんが、認識しておく必要があります。 取り付けの確実性: 主に強力な両面テープとビスで固定しますが、脱落防止のため、取り付け面の脱脂作業などを丁寧に行うことが不可欠です。 DIYに不安がある場合はショップへの依頼が賢明です。 価格: 高品質なFRP製品は塗装済みのものが多く、数万円程度の費用がかかります。 費用対効果を十分に検討しましょう。 洗車時の配慮: 高圧洗浄機を直接当てると、固定用の両面テープが剥がれる原因になる可能性があるため、手洗い洗車が推奨されます。 |
デビルマスクは、PCX(jk05)のカスタムを「もう一歩先」へ進めたいと考えるオーナーにとって、非常に魅力的な選択肢です。
明るさと印象を変えるヘッドライト周辺
PCX(jk05)に標準装備されているLEDヘッドライトは、デザイン性に優れ、夜間の基本的な視認性も確保されています。しかし、さらなる安全性と個性を追求するために、ヘッドライト周辺のカスタムは多くのオーナーの関心事となっています。
安全性向上に直結するLEDフォグランプ
特に夜間、街灯の少ない郊外や山道を走行する機会が多い方にとって、LEDフォグランプの増設は非常に有効なカスタムです。ヘッドライトは前方を遠くまで照らすことを主目的としていますが、フォグランプは左右の手前側を広範囲に照らす役割を担います。
- SP武川製 LEDフォグランプキット: PCX(jk05)専用の取り付けステーが付属しており、スマートな装着が可能です。スポット照射とフラット照射を組み合わせた配光により、ヘッドライトの死角を効果的にカバーします。
- エンデュランス製 LEDフォグランプキット: こちらも専用設計で、手元のスイッチでON/OFF操作が可能です。消費電力が少ない高輝度LEDを採用しているため、バッテリーへの負担も最小限に抑えられています。
フォグランプには、一般的なホワイト(白色光)の他に、イエロー(黄色光)の選択肢もあります。黄色光は霧や雨などの悪天候時に乱反射しにくく、路面の状況をより明確に視認できるという特性があります。
ただし、これらのキットの取り付けにはフロントカウル一式の脱着や、アクセサリー電源への配線作業が伴います。これはカスタムの中でも難易度が高い部類に入るため、作業に自信がない場合は、迷わず専門のバイクショップに相談しましょう。
光の演出で個性を出す灯火類の交換
ウインカーやテールランプを社外品に交換することで、光によるドレスアップも楽しめます。最近のトレンドは、高級四輪車などにも採用されている「シーケンシャルウインカー(流れるウインカー)」です。点灯時にLEDの光が内側から外側へ流れるように点灯するため、周囲からの被視認性が向上するだけでなく、非常にスタイリッシュな印象を与えます。
テールランプユニットも、レンズをスモークタイプに交換したり、点灯パターンが異なる製品に交換したりすることで、リアビューの印象を大きく変えることができます。
これらの灯火類を交換する際には、道路運送車両法の保安基準に適合した製品を選ぶことが絶対条件です。ウインカーの点滅回数(毎分60回以上120回以下)やレンズの色、面積など、細かな規定がありますので、購入前に必ず「保安基準適合品」や「Eマーク認証」などの表記があるかを確認してください。
足つきと快適性を向上させるシート交換
バイクとライダーが常に接するパーツであるシートは、ライディングの快適性や安心感を左右する非常に重要な部分です。特に毎日乗る通勤・通学ユーザーや、長距離ツーリングを楽しむライダーにとって、シートカスタムの恩恵は計り知れません。
PCX(jk05)はスクーターとしては標準的なシート高ですが、身長によっては信号待ちで爪先立ちになり、不安定さを感じることもあるでしょう。このような足つき性の悩みを解決し、さらにデザイン性と快適性をプラスするのがカスタムシートへの交換です。
ローダウンシートのメリット・デメリット
ローダウンシートは多くのメリットをもたらしますが、いくつかトレードオフとなる点も存在します。導入を検討する際は、両方の側面を理解しておくことが大切です。
側面 | 詳細内容 |
メリット | 足つき性の劇的な向上: 約3cmのローダウンとシート角の削り込みにより、両足が地面にしっかりと届く安心感が得られます。 これにより、停車時や取り回し時の立ちゴケリスクが大幅に低減します。 疲労軽減: 純正シートに比べて着座位置が固定され、体が前後にずれにくくなるため、無駄な力を使わずに安定したライディングポジションを維持できます。 高反発ウレタンやゲル内蔵モデルは、路面からの微振動を吸収し、お尻の痛みを和らげます。 デザイン性の向上: タックロール、ダイヤモンドステッチ、パイピングカラーの変更など、デザインの選択肢が豊富です。 シート一つで車体全体の雰囲気をクラシカルにもスポーティーにも演出できます。 |
デメリット | メットイン容量の変化: 社外品のオリジナルシートベースを使用している製品の場合、内部形状の違いから、純正シートに比べてヘルメットの収納スペースが若干狭くなる可能性があります。 収納するヘルメットの形状によっては、シートが閉まりにくくなるケースも報告されています。 クッション性の変化: ローダウンを実現するために内部のウレタンを薄くしているため、製品によっては純正よりも乗り心地が硬く感じられることがあります。 大きな段差を乗り越えた際の底付き感が出る場合もあります。 防水性: 多くの製品で防水フィルム処理が施されていますが、デザイン性を重視したステッチ(縫い目)部分から、長時間の雨や洗車で水分が浸透する可能性があります。 |
代表的なシートメーカーと特徴
- ウイルズウィン: ローダウンシートの種類が非常に豊富で、パイピングの色やシート生地を選べるなど、セミオーダー感覚で注文できます。比較的手に入れやすい価格帯も魅力です。
- NOI WATDAN(ノイワットダン): タイのカスタムシート専門メーカー。独創的でスタイリッシュなデザインが多く、品質にも定評があります。高反発ウレタンを内蔵したモデルは、長距離での快適性に優れています。
- エンデュランス: 自社で開発したパーツを多く手掛けるメーカー。ローダウンシートもラインナップしており、ゲルを内蔵した「GEL-SONIC」シートは、衝撃吸収性に特化しており、乗り心地を最優先するユーザーから高い評価を得ています。
シート交換は、ボルト2本で固定されているだけなので、DIYでの作業難易度は比較的低いカスタムです。自分のライディングスタイルと悩みに合わせて、最適なシートを選んでみてください。
統一感を出す純正パーツの活用術
「カスタム」と聞くと、派手な社外パーツを装着するイメージが強いかもしれません。しかし、ホンダ自身がPCX(jk05)のために開発した「純正アクセサリー」を活用することで、バイク本来の洗練されたデザインを損なうことなく、機能性と質感を大幅に向上させるという、非常にスマートなアプローチが可能です。
純正アクセサリーの最大の強みは、その圧倒的な品質とフィッティング精度にあります。車両の設計段階から同時進行で開発されるため、 마치元からそこにあったかのような自然な一体感で装着できます。社外パーツで時折見られるような「取って付けた感」や、取り付け時の微妙なズレ、チリが合わないといったトラブルとは無縁です。
おすすめの純正アクセサリー
ホンダの公式サイトや販売店では、PCX(jk05)用の様々な純正アクセサリーが用意されています。
パーツカテゴリー | 代表的な製品名 | 主な特徴とメリット |
外装・快適性 | ボディマウントシールド | 高い風防効果で走行時の疲労を大幅に軽減。 ポリカーボネート製で耐久性も高い。 |
ナックルバイザー | 走行風から手を守り、特に冬場の寒さを和らげる。 グリップヒーターとの併用で効果は絶大。 | |
グリップヒーター | ホンダ独自の半周タイプで、操作性を損なわずに指先を温める。 バッテリー電圧監視機能付きで安心。 | |
積載性 | トップボックス 35L | 車両のメインキーで開閉できる「ワン・キー・システム」が非常に便利。 フルフェイスヘルメット1個が収納可能。 |
トップボックス取付ベース | トップボックスを車体に確実に固定するための専用キャリア。 強度とデザイン性を両立。 | |
ドレスアップ | フロアステップ | 純正の樹脂製ステップの上に貼り付けるアルミ調パネル。 足元に高級感をプラスする。 |
セキュリティ | アラーム | 車両への振動や傾斜を検知して警告音を発する盗難抑止アラーム。 イモビライザーとの連携も可能。 |
これらの純正パーツは、確かに社外品の同等機能を持つパーツと比較して価格がやや高めに設定されている場合があります。しかし、その価格にはメーカー保証という安心感が含まれています。万が一の不具合の際にも、ホンダの正規販売店で対応してもらえる点は、何物にも代えがたいメリットと言えるでしょう。
派手なカスタムよりも、バイク本来の質感を高め、長く安心して乗り続けたいと考える堅実なユーザーにとって、純正パーツの活用は最も確実で満足度の高い選択肢となります。
走りを追求するPCX(jk5) カスタム

- 加速性能を向上させる駆動系チューン
- 究極のスタイルを目指すフルカスタム
- サウンドと軽量化を両立するマフラー
- スポーティさを演出する足回りパーツ
- 理想のPCX(jk5) カスタムを実現しよう
加速性能を向上させる駆動系チューン
PCX(jk5)の洗練されたeSP+エンジンは、ノーマル状態でも非常にバランスの取れた優れた性能を発揮します。しかし、一度そのスムーズさを知ってしまうと、「もっと鋭い加速が欲しい」「追い越しでさらなる余裕が欲しい」と感じ始めるのがライダーの性かもしれません。そうした走りの欲求に応えるのが、スクーターカスタムの心臓部とも言える「駆動系チューニング」です。
エンジンが生み出した動力を、いかに効率よく、そしてライダーの意図通りにリアタイヤに伝えるか。それを司るのが駆動系の役割です。エンジン本体に手を入れる大掛かりなチューニングとは異なり、駆動系カスタムはパーツの交換とセッティングによって、走りのキャラクターを大きく変えることが可能です。
主要な駆動系カスタムパーツとその役割
駆動系チューニングを理解するために、まずは主要なパーツの役割を知ることから始めましょう。
パーツ名 | 主な役割とカスタムによる効果 |
プーリー & ドライブフェイス | ドライブベルトを挟み込み、遠心力で移動することで変速比を変える中心的なパーツ。 「ハイスピードプーリー」に交換することで、変速の幅(レシオカバレッジ)が広がり、発進加速と最高速の両方を向上させることが可能。 |
ウエイトローラー | プーリー内部に収められ、エンジンの回転数が上がると遠心力で外側に移動し、プーリーを押し広げる重りの役目を果たす。 軽くすると高回転を維持しやすくなり加速型に、重くすると低回転で変速し巡航・燃費型になる。 セッティングの要。 |
クラッチ | エンジンの回転数が一定以上に達すると、遠心力でアウターに繋がり動力を伝達するパーツ。 「軽量強化クラッチ」に交換すると、より高い回転数でミート(接続)するようになり、鋭いスタートダッシュが可能になる。 |
センタースプリング | プーリーが開く力に対抗するスプリング。硬いもの(強化品)に交換すると、プーリーが開きにくくなり、変速タイミングが高回転側に移行する。 再加速時のレスポンス向上や、熱による性能低下(熱ダレ)を抑制する効果がある。 |
プーリーキットの導入とウエイトローラーセッティング
駆動系チューンの第一歩として最もポピュラーなのが、プーリー、ドライブフェイス、ウエイトローラーなどがセットになった「プーリーキット」の導入です。ウイルズウィンの「ハイパープーリー フルキット」やベリアルサービスの「ハイパーGPプーリーキット」などが代表的です。これらのキットを組み込むだけで、ノーマルとは別物の、メリハリの効いた加速性能を手に入れることができます。
さらに奥深いのが、ウエイトローラーのセッティングです。例えば、ノーマルのPCX(jk5)のウエイトローラー総重量を基準に、1g〜2g軽くするだけで、街中でのキビキビ感は明らかに増します。ただし、軽くしすぎるとエンジン回転ばかりが先行して速度が乗らない、いわゆる「ベルトが滑っている」ような状態になったり、最高速が落ち込んだりします。逆に重くしすぎると、発進が鈍重になり、本来の性能を発揮できません。マフラーを交換しているか、ライダーの体重、主に走行するステージ(市街地か、峠道か)など、様々な要素を考慮しながら、0.5g単位で重さを調整し、自分だけの「黄金比」を見つけ出すのが、このカスタムの最大の楽しみです。
駆動系の分解・組立には、プーリーを固定するユニバーサルホルダーや、規定トルクで締め付けるためのトルクレンチといった専門工具が必須です。特にクランクシャフト先端のナットの締め付けトルク管理は非常に重要で、締めすぎはシャフトの破損、緩みはパーツの脱落に繋がり、エンジンに致命的なダメージを与える可能性があります。作業に少しでも不安がある場合は、経験豊富なプロショップに依頼することを強く推奨します。
究極のスタイルを目指すフルカスタム
個別のパーツ交換による性能向上やドレスアップを重ね、その先に見えてくるのが、車両全体を一つの作品として仕上げる「フルカスタム」の世界です。フルカスタムとは、単に高価なパーツを無計画に取り付けることではありません。明確なコンセプトのもと、外装、性能、足回りといったすべての要素に手 röretを加え、細部に至るまで一貫したテーマで作り込む、いわばバイクカスタムの集大成です。
PCX(jk5)という優れたプラットフォームをベースに、オーナーの個性と情熱を注ぎ込むことで、世界に一台だけのマシンを創り上げることができます。
代表的なフルカスタムの方向性
- ラグジュアリースタイル(ロースタイル):このスタイルのキーワードは「低く、長く、美しく」。ADIO製のロングホイールベースキット(ロンホイ)で車体を延長し、エンデュランスや社外メーカーのエアサスペンションを組んで、停車時には地面スレスレまで車高を下げるのが特徴です。ハンドルはセパレートハンドルに交換して低いライディングポジションを構築し、外装はプロによるカスタムペイント(オールペン)で深みのある色合いに仕上げます。シート下のメットインスペースには、オーディオシステムやLEDイルミネーションを組み込み、夜間のイベントなどで圧倒的な存在感を放ちます。まさに「走る芸術品」とも言えるスタイルです。
- スポーツスタイル(パフォーマンススタイル):こちらはラグジュアリースタイルとは対極に、スクーターの枠を超えた運動性能を徹底的に追求する方向性です。キタコなどからリリースされているボアアップキットを組み込んで排気量を上げ、ビッグスロットルボディやインジェクションコントローラーで燃調をセッティングし、エンジンの絶対的なパワーを向上させます。足回りには、オーリンズやYSSといった高性能なリアサスペンションを装着し、ブレーキもブレンボなどの高性能キャリパーと大径ディスクに換装して制動力を強化。外装にはカーボン製のパーツを多用して軽量化を図り、サーキット走行も視野に入れたマシンに仕上げます。
フルカスタムへの道
フルカスタムを実現するには、膨大な費用と時間、そして何よりも深い知識と情熱が必要です。パーツ代だけで数十万円から、場合によっては百万円を超えることも珍しくありません。また、これほど高度なカスタムになると、個人のDIYで対応できる範囲をはるかに超えています。
成功への鍵は、自分の理想とするスタイルを形にしてくれる、信頼できるカスタムショップを見つけることです。雑誌やウェブサイトでショップの実績をよく調べ、実際に足を運んでビルダーと話し込み、自分の理想のイメージを正確に伝えるコミュニケーションが不可欠です。予算と完成までの期間を明確にし、ショップと二人三脚でマシンを創り上げていくプロセスそのものが、フルカスタムの醍醐味と言えるでしょう。
サウンドと軽量化を両立するマフラー
マフラー交換は、数あるカスタムの中でも特に人気が高く、多くのオーナーがその効果を実感しています。なぜなら、マフラーは「性能」「サウンド」「ルックス」という、バイクの魅力を構成する3大要素に直接的に変化をもたらすパーツだからです。静粛性に優れた純正マフラーから、個性豊かな社外マフラーに交換することで、あなたのPCX(jk5)は新たな生命を吹き込まれたかのように生まれ変わります。
マフラーの材質による違い
マフラー選びの際、デザインやメーカーと並んで重要なのが、サイレンサー(消音器)部分の材質です。材質によって、性能、価格、そして音質まで変わってきます。
材質 | 特徴 | メリット | デメリット |
ステンレス | 最も一般的で、多くのマフラーに採用されている。錆びにくく耐久性が高い。 | 比較的安価で、コストパフォーマンスに優れる。鏡面仕上げや焼き色(ヒートチタン風)など、見た目のバリエーションも豊富。 | チタンやカーボンに比べると重量がある。音質はやや硬質で高音寄りになる傾向。 |
チタン | レーシングマシンにも採用される高級素材。非常に軽く、強度も高い。 | 圧倒的な軽さによる運動性能の向上が最大の魅力。独特の青い焼き色(ヒートカラー)が美しく、所有感を満たす。音質は乾いたレーシーなサウンド。 | 価格が非常に高価。加工が難しく、製品のバリエーションが限られる。 |
カーボン | 炭素繊維を編み込んだ素材。軽量で、熱を持ちにくい特性がある。 | チタンに次ぐ軽さを誇る。独特の織り目がスポーティーな印象を与える。音質は重厚で深みのある低音になる傾向があり、ジェントルなサウンドを好む層に人気。 | 衝撃に弱く、転倒などで割れやすい。経年劣化で樹脂部分が白化することがある。 |
JMCA認証の重要性
マフラーを選ぶ上で、デザインや音質以上に絶対に確認しなければならないのが「JMCA政府認証」の有無です。JMCA(全国二輪車用品連合会)が定める認証制度は、国が定める騒音規制値と排出ガス規制値をクリアした製品であることを証明するものです。
この認証プレートが付いたマフラーであれば、安心して公道で使用することができ、警察による取り締まりの対象になることもありません。また、近隣住民への騒音トラブルを避ける上でも、非常に重要な指標となります。一部に、レース専用で公道使用不可のマフラーも販売されているため、購入時には必ずJMCA認証プレートの有無を確認する習慣をつけましょう。
マフラー交換は、単に音を大きくする行為ではありません。適切な製品を選ぶことで、心地よいサウンドを手に入れ、軽量化による運動性能の向上を図り、そして何よりもバイクのスタイルを決定づける、奥深く満足度の高いカスタムなのです。
スポーティさを演出する足回りパーツ
快適な乗り心地の実現と、俊敏なハンドリング。この二つを高い次元で両立させるのが、足回りカスタムの目的です。純正の足回りは、様々なライダーの体重や多様な路面状況を想定した、いわば「最大公約数」的なセッティングが施されています。ここに手を入れることで、より自分の走り方や好みに合わせた、オーダーメイドのような乗り味を手に入れることができます。
前述の通り、リアサスペンションの交換は効果的な第一歩ですが、そこからさらに踏み込むことで、PCX(jk5)はスクーターの枠を超えたスポーティーな走りを見せてくれます。
サスペンションセッティングの基礎知識
高性能なリアサスペンションの多くには、「プリロード調整機能」が備わっています。プリロードとは、ライダーが乗車していない状態で、あらかじめスプリングにかけておく初期荷重のことです。この調整は、乗り心地と操縦性に大きく影響します。
- プリロードを強める(硬くする): スプリングが縮みにくくなり、車高が少し上がります。これにより、コーナリング時の安定性が増し、重い荷物を積んだりタンデムしたりする際に、サスペンションが底付きするのを防ぎます。ただし、強くしすぎると路面の細かな凹凸を拾いやすくなり、乗り心地が硬くなります。
- プリロードを弱める(柔らかくする): スプリングが縮みやすくなり、乗り心地がソフトになります。一人乗りで快適性を重視する場合に適していますが、弱めすぎるとコーナリング中に車体が不安定になったり、段差で底付きしやすくなったりします。
自分の体重や走り方に合わせてこのプリロードを調整するだけで、バイクのキャラクターは大きく変わります。
フロントフォークとタイヤの重要性
リアサスペンションを強化したら、次はフロント周りにも目を向けたいところです。ウイルズウィンの「ローダウンフロントフォークスプリング」のように、純正よりも硬いスプリングに交換することで、ブレーキング時のノーズダイブ(フロントが大きく沈み込む現象)を抑制し、より安定した制動が可能になります。さらに上級者向けには、フロントフォーク内のフォークオイルの粘度を変更したり、油面の高さを調整したりすることで、より細かなセッティングを追求することもできます。
そして、足回りカスタムの最終仕上げとも言えるのが「タイヤ交換」です。純正タイヤは燃費や耐久性を重視したコンパウンド(ゴム質)を採用していますが、これをスポーツ走行向けのハイグリップタイヤ(例:ミシュラン CITY GRIP 2, ダンロップ SCOOTSMARTなど)に交換するだけで、コーナリング時のグリップ力が劇的に向上します。これにより、雨の日のマンホールなどでも滑りにくくなるという安全性の向上にも繋がります。
足回りのカスタムは、一つ一つのパーツが相互に影響し合うため、全体のバランスを考えながら進めることが重要です。リアサスペンション、フロントフォーク、タイヤの3つの要素をトータルで考えることで、PCX(jk5)は意のままに操れる、走りの楽しいマシンへと変貌を遂げるでしょう。
理想のPCX(jk05) カスタムを実現しよう
- PCX(jk05)のカスタムは「見た目」「性能」「快適性」の3つの方向性から考える
- 最初に自分が目指すスタイルを明確にすることが失敗しないための最大のコツ
- デビルマスクやフェンダーレスキットは比較的少ない投資でバイクの印象を劇的に変える
- LEDフォグランプの追加はドレスアップだけでなく夜間や悪天候時の安全性を高める実用的なカスタム
- シート交換は小柄なライダーの足つきの不安を解消し長距離走行の快適性を向上させる
- ホンダ純正アクセサリーはフィッティングや品質、保証の面で絶対的な安心感がある
- より鋭い加速やレスポンスを求めるなら駆動系のカスタムが最も効果的
- ハイスピードプーリーは発進から最高速まで全体のパフォーマンスを引き上げる
- ウエイトローラーのセッティングは自分の走りに合わせた微調整が可能な奥深い世界
- マフラー交換はサウンド、性能、ルックスを一度に楽しめる満足度の高いカスタム
- 公道走行ではJMCA政府認証マフラーを選ぶことが法律遵守と近隣への配慮に繋がる
- リアサスペンションの交換は乗り心地としなやかなコーナリング性能を両立させる
- ローダウンはスタイリッシュな見た目を実現するが、走行性能とのバランスを考慮する必要がある
- カスタムパーツの多くは取り付けに専門知識や特殊工具を要するため、無理は禁物
- 作業に不安がある場合は、迷わず信頼できるバイクショップに相談し、安全を最優先する