PCXでのツーリング計画、心躍りますよね。
しかしその一方で、「スクーターじゃ、やっぱりダサいかな…」「きつい長距離の旅は無謀かもしれない」といった不安が頭をよぎりませんか?
もしその不安が、あなたの冒険をためらわせているとしたら、それは非常にもったいないことかもしれません。
この記事では、ネット上の評判の裏側にある真実を解き明かします。
愛車を最適なツーリング仕様に変えるカスタムの秘訣、たった一つのツーリングバッグから始まるキャンプという新たな挑戦、そして多くのベテランライダーたちが口を揃えるPCXツーリングが本当に楽しい理由まで。
後悔や失敗を避けるための知識を武器に、あなたの旅を忘れられない最高の体験へと変える準備を、ここから始めましょう。
- PCXツーリングが「ダサい」と言われる背景と実際の評価
- 長距離走行が「きつい」と感じる原因とその具体的な対策
- ツーリングを最大限に楽しむための効果的なカスタム方法
- 豊富な積載機能を利用してキャンプツーリングを実現するノウハウ
PCX ツーリングの気になる評判を徹底解説

- PCXがダサいと言われる理由とは?
- きつい長距離走行での疲労と対策
- 125ccと160ccで走行性能はどう違う?
- 高速道路でのパワーと安定性を検証
- 実は楽しいと感じるライダーの声も多数
PCXがダサいと言われる理由とは?
PCXでのツーリングが一部で「ダサい」と見なされる背景には、単なる個人の好みを越えた、いくつかの複合的な理由が存在します。
大きな要因の一つは、PCXのデザインとスクーターという車両カテゴリそのものに対する、特に趣味性の高いツーリングシーンでの先入観です。PCXは流線型を基調としたモダンで洗練されたデザインですが、これは主に都市での機能性やスマートさを意識したものです。一方、ツーリングで多く見られるネイキッドバイクの機械的な美しさ、アメリカンバイクの重厚感、あるいはスポーツバイクの攻撃的なフォルムとは方向性が異なります。そのため、力強いエンジン音やメカニカルな造形美を愛するライダーからは、静かで滑らかなスクーターは趣味の乗り物として物足りなく映り、結果として「スポーティさに欠ける」「迫力がない」といった評価につながることがあります。
また、ユーザー層のイメージもこの評判に影響を与えています。PCXは燃費の良さや維持費の安さ、運転の容易さから、主に通勤や通学、日常の買い物といった実用的な目的で選ばれることが多いバイクです。特に利便性を重視する中高年層に高い人気を誇るため、「おっさんのバイク」「生活感がある」という印象を持つ人も少なくありません。この実用車としてのイメージが、非日常を楽しむツーリングという趣味の文脈においては、マイナスに作用してしまうのです。
しかし、これはあくまで一面的な見方に過ぎません。PCXのデザインはシンプルで飽きがこず、どんな風景にも溶け込む柔軟性を持っています。さらに、カスタムパーツが非常に豊富なため、マフラーやサスペンション、ハンドル周りを変更したり、個性的なカラーリングを施したりすることで、所有者の個性を反映したスタイリッシュな一台に仕上げることが可能です。都会的な風景にも自然に溶け込むデザインは、むしろ大きな魅力と評価する声も多く、固定観念に縛られずにその価値を見出すことが大切です。
きつい長距離走行での疲労と対策
PCXでの長距離ツーリングが「きつい」と感じられるのには、物理的・精神的な負担につながる明確な原因が存在します。これらを理解し、適切な対策を講じることが快適な旅の鍵となります。
まず最も多くのライダーが挙げるのが、シートの快適性に起因する「身体的な痛み」です。PCXの純正シートは短距離移動を想定した設計で、長時間同じ姿勢で座り続けると、体重がお尻の特定の部分に集中してしまいます。これにより血行が悪化し、数時間の走行で耐え難い痛みへと変わることが少なくありません。
次に、エンジンのパワー不足に由来する「精神的な疲労」が挙げられます。特に125ccモデルの場合、バイパスや自動車専用道、勾配のきつい山道などで交通の流れに乗るのが難しい場面があります。常にアクセルを大きく開け、エンジンを高回転で維持する必要があるため、絶えず後続車を気にしながら走ることになります。この緊張感が、知らず知らずのうちに精神的な疲労として蓄積していくのです。エンジンの振動や高回転時のノイズも、長時間となるとストレスの原因になり得ます。
さらに、車体の軽さがもたらす「走行安定性への不安」も見逃せません。軽量な車体は取り回しが良い反面、高速道路や橋の上、トンネルの出口などで強い横風を受けると、ハンドルが大きく取られやすくなります。車体を安定させようと無意識に体に力が入り、これが体力を消耗させる一因となります。
これらの疲労を体系的に軽減するためには、以下の対策が有効です。
| 疲労の原因 | 具体的な症状 | 有効な対策 |
| シートの快適性 | お尻、腰の痛み、血行不良 | ・ゲル素材のシートクッション(ゲルザブ)の追加 ・社外品のコンフォートシートへの交換 ・定期的な休憩とストレッチ |
| パワー不足 | 精神的な緊張、エンジン振動・騒音 | ・PCX160を選択する ・無理のないルート設定(バイパス回避など) ・スロットルアシストの利用で右手の負担軽減 |
| 風の影響 | 体力消耗、体温低下、風切り音 | ・大型のロングスクリーンへの換装 ・体にフィットする防風性能の高いウェアの着用 ・ナックルガードの装着で手の冷えを防止 |
これらの対策を組み合わせることで、PCXでの長距離ツーリングは格段に快適なものへと変わります。
125ccと160ccで走行性能はどう違う?
PCXには主に125ccと160ccの2つの排気量モデルが存在し、どちらを選ぶかによってツーリングのスタイル、行動範囲、そして維持費まで大きく変わってきます。それぞれの走行性能と特性の違いを深く理解することが、購入後に後悔しないための重要なポイントです。
最も大きな違いは、法規的な制約、つまり高速道路を走行できるかどうかです。道路運送車両法上、125cc以下のバイクは「原付二種」に分類され、高速道路や多くの自動車専用道を走ることができません。一方、125ccを超えるPCX160は「軽二輪」クラスとなり、高速道路の利用が全面的に可能です。これはツーリングにおいて決定的な差となり、目的地選択やルート設定の自由度を格段に広げます。
走行性能の面では、やはり排気量の大きいPCX160に明確なアドバンテージがあります。最高出力や最大トルクといったカタログスペックの差はもちろん、実際の走行シーンでその余裕を体感できます。信号からの発進や60km/hからの追い越し加速でより力強さを感じられ、特に乗車人数や荷物が増えるツーリング時、あるいは長い登坂路ではその差が顕著になります。125ccモデルが流れの速い幹線道路で少し苦しさを感じる場面でも、160ccモデルならストレスなく巡航することが可能です。
一方で、維持費の面では125ccモデルにメリットがあります。軽自動車税が安価であることに加え、多くの自動車保険に付帯している「ファミリーバイク特約」を利用できるため、任意保険料を大幅に節約できる場合があります。
| 項目 | PCX (125cc) | PCX160 |
| 法規分類 | 原付二種 | 軽二輪 |
|---|---|---|
| 高速道路走行 | 不可 | 可能 |
| 主な用途 | 街乗り、下道での短〜中距離ツーリング | 街乗りから高速利用の長距離ツーリングまで |
| パワー感 | 街乗りでは十分だが、幹線道路では力不足を感じる場面も | 全域で余裕があり、特に加速や登坂で力強い |
| 維持費 | 軽自動車税が安い ファミリーバイク特約が利用可能 | 軽自動車税がやや高い ファミリーバイク特約は利用不可 |
| おすすめのライダー | 維持費を抑え、下道ツーリングを主体に楽しみたい方 | 行動範囲を広げ、余裕のある走りを求める方 |
どちらのモデルを選ぶべきかは、自身のツーリングスタイルと予算を天秤にかけて判断する必要があります。下道でのんびりと景色を楽しむツーリングがメインで、経済性を重視するなら125ccモデルが適しています。一方で、時には高速道路を使って遠方まで足を延ばしたい、よりパワフルで余裕のある走りを求めるのであればPCX160が最適な選択となるでしょう。
高速道路でのパワーと安定性を検証

PCX160は高速道路を走行できる資格を持っていますが、そのパフォーマンスは大型のツーリングバイクとは一線を画します。快適かつ安全に利用するためには、このバイクの高速域におけるパワーと安定性の限界を正しく理解しておくことが不可欠です。
まずパワーについてですが、PCX160の最高速度はライダーの体重や積載状況、路面状況にもよりますが、概ね時速110km前後に達します。日本の高速道路の法定最高速度は時速100km(一部新東名などで120km)なので、最も左側の走行車線を交通の流れに乗って走る分には、パワー不足を感じることはほとんどありません。しかし、その真価が問われるのは追い越し時です。時速80kmからの加速は緩やかで、追い越し車線を使って前方の車両をスムーズに抜き去るような俊敏性は期待できません。特に長い上り坂では速度が落ちやすく、アクセルを全開にしても速度維持が困難な場面も考えられます。そのため、無理な追い越しは絶対に避けるべきです。
次に安定性ですが、PCXのしっかりとしたフレームと、スクーターとしては大径な14インチホイールが高い貢献をしています。直進安定性は良好で、平坦な道を淡々と走る上では不安を感じることは少ないでしょう。しかし、車重が130kg台と軽量であるため、横風の影響は避けられません。特に、大型トラックに追い越される際に発生する風圧や、トンネルの出口、海上橋の上などでは、予期せぬ風にハンドルがあおられることがあります。このような状況では、ニーグリップができないスクーターの構造上、上半身でバランスを取る必要があり、緊張を強いられます。
PCX160での高速道路走行を快適に、そして安全に行うためのコツは、「左車線を、時速80kmから90kmで淡々と走る」ことに尽きます。この速度域が、エンジンへの負荷、燃費、そしてライダーの疲労度のバランスが最も取れたスイートスポットです。PCX160にとっての高速道路は、目的地までスピーディーに駆け抜けるためのステージではなく、長距離を効率よく移動するための手段や、一般道の酷い渋滞区間を回避するための「エスケープルート」として捉えるのが、最も賢明な付き合い方と言えます。
実は楽しいと感じるライダーの声も多数
「ダサい」「きつい」といったネガティブな評判が一部で聞かれる一方、実際にPCXでツーリングを楽しんでいるライダーからは、それを補って余りあるほどの肯定的な意見が寄せられています。その魅力は、パワーや迫力といった既存の価値観とは異なる、PCXならではの長所に集約されます。
最大のメリットとして挙げられるのが、その圧倒的な「手軽さ」と「取り回しの良さ」です。軽量でコンパクトな車体は、ツーリング先で出会うような観光地の狭い路地や、混雑した駐車スペースでも気負うことなく扱えます。マニュアルトランスミッション車のような煩雑なクラッチ操作やギアチェンジが不要なため、信号の多い市街地や渋滞路でも運転が非常に楽であり、そのぶん周囲の景色や雰囲気を楽しむ余裕が生まれます。この「イージーライド」こそが、多くのライダーを魅了する点です。
また、「驚異的な経済性」もツーリングの楽しさを力強く支える大きな要素です。郊外をゆったり走ればリッター50kmを超えることも珍しくなく、一度の給油で300km以上を無給油で走り切れる長い航続距離は、ガソリンスタンドの少ない地域へ向かう際の大きな安心材料となります。燃料費を気にせず、思い立った時にふらっと遠出できる感覚は、PCXの大きな魅力です。
さらに、スクーターならではの「卓越した利便性」は、ツーリングのスタイルそのものを変えるほどのインパクトがあります。シート下にヘルメットや上着、ちょっとした荷物を放り込める大容量のラゲッジスペースは、ツーリングの途中で立ち寄った店でお土産を買うといった楽しみ方を容易にします。スポーツバイクではパッキングに悩むような荷物も、PCXならスマートに収納可能です。
これらの長所から導き出されるのは、「速さを競うのではなく、自分のペースで景色を楽しみながらトコトコ走る幸せ」という、新しいツーリングの価値観です。多くのライダーがPCXでのツーリングは楽しいと評価する理由は、まさにこの点にあるのです。
快適なPCX ツーリングを実現する方法

- おすすめのツーリング仕様カスタム5選
- ツーリングバッグの選び方と積載術
- キャンプも可能な積載カスタムとは
- 快適性を上げるスクリーンとシート
- 驚きの燃費性能と航続距離
おすすめのツーリング仕様カスタム5選
ノーマルのPCXでも十分にツーリングを楽しむことはできますが、いくつかのアイテムを追加することで、その快適性や利便性は劇的に向上します。長距離を走る上で特に効果が高く、多くのPCXオーナーから支持されているおすすめのツーリング仕様カスタムを5つ、選び方のポイントと合わせて紹介します。
1. リアボックス(トップケース)の装着
積載能力を飛躍的に高める、ツーリングカスタムの王道です。PCXのシート下収納(約30L)だけでは心許ない泊りがけのツーリングでも、30L~45Lクラスのリアボックスを追加すれば、着替えや雨具、お土産などを余裕で収納できます。
選ぶ際のポイントは「容量」と「着脱の容易さ」です。ヘルメットを収納したい場合は、お使いのヘルメットが入るかサイズを必ず確認しましょう。また、ベースプレートを残してボックス本体だけを簡単に取り外せるタイプなら、普段の街乗りでは外しておくといった運用も可能です。ハードケースタイプは防水性や防犯性にも優れており、観光でバイクを離れる際も安心感が違います。
2. ロングスクリーンの換装
前述の通り、長時間の走行で体力を奪う走行風を軽減するために非常に有効です。特に高速道路を利用する場合には必須とも言えるアイテムで、装着前後で疲労度が全く違ってきます。
選ぶ際は「高さ」と「形状」が重要です。高すぎると視界の妨げになったり、雨天時に水滴で見えにくくなったりすることがあります。自分の身長とライディングポジションに合わせて、ヘルメットの上端あたりまでの高さが一般的です。形状によっては風の巻き込みが発生することもあるため、レビューなどを参考にすると良いでしょう。
3. 快適性の高いシートへの交換
お尻の痛みを軽減し、長距離ツーリングを最後まで楽しむための重要な投資です。最も手軽なのは純正シートの上に敷くゲル素材のクッションですが、より根本的な解決を求めるなら、シート自体の交換がおすすめです。
社外品のカスタムシートは、内部のウレタン素材が衝撃吸収性や体圧分散に優れたものに変更されているだけでなく、座面の形状が工夫されていて体のホールド感を高めてくれるものもあります。デザインも豊富なので、車体のドレスアップ効果も期待できます。
4. USB電源ポートの設置
現代のツーリングに欠かせないスマートフォンやナビゲーションシステムを、走行中に充電するための必須アイテムです。PCXには標準でアクセサリーソケットが装備されているモデルもありますが、シガーソケットからUSBへの変換アダプタが必要になります。ハンドル周りに防水キャップ付きのUSBポートを直接増設することで、よりスマートかつ手軽に充電環境を構築できます。
5. グリップヒーターの取り付け
寒い季節のツーリングで、その恩恵を最も感じられるカスタムの一つです。指先がかじかむとブレーキやアクセルの繊細な操作が鈍り、安全運転に支障をきたすこともあります。グリップヒーターがあれば、真冬でも手のひらは暖かく、快適かつ安全にツーリングを楽しむことが可能です。グリップの太さや温度調節機能の有無など、様々な製品があるので好みに合わせて選びましょう。
ツーリングバッグの選び方と積載術
PCXの魅力であるシート下のラゲッジスペース(約30L)は日帰りツーリングには非常に便利ですが、泊りがけの旅行やキャンプとなると、その容量不足は否めません。そこで重要になるのが、各種ツーリングバッグを効果的に活用した積載術です。
まず、積載の基本となるのが「リアボックス(トップケース)」です。一度リアキャリアを取り付けてしまえば、多くの製品はワンタッチで着脱可能で、普段使いとツーリングでの使い分けも容易です。容量は30L〜50L程度のものが主流で、ヘルメットや雨具など、濡らしたくないものや頻繁に出し入れするものを入れておくのに最適です。
次に、より大きな容量を確保したい場合には「シートバッグ」が選択肢となります。リアシート上に付属のベルトで固定するタイプで、20L程度の小型のものから、70Lを超えるキャンプツーリング向けの大型なものまで、容量のバリエーションが非常に豊富です。荷物の量に応じてマチを広げて大きさを変えられる可変容量タイプの製品も人気があります。
さらに積載量を増やしたい場合は、「サイドバッグ」を追加する方法もあります。PCXは車体後部のカウルが張り出しているため、多くの場合はサイドバッグサポートという専用の金具なしでも取り付けが可能ですが、タイヤへの巻き込みや走行中の振動によるカウルへの擦り傷には注意が必要です。
これらのバッグを選ぶ際は、容量だけでなく「防水性」も重要な判断基準となります。ツーリングでは突然の雨に見舞われることも少なくありません。バッグ本体が防水素材でできているものや、専用のレインカバーが付属しているものを選ぶと安心です。
| バッグの種類 | 主なメリット | 主なデメリット | こんな人におすすめ |
| リアボックス | 防水性・防犯性が高い、着脱が容易 | リアキャリアが必要、重心が高くなる | 普段使いと兼用したい、防犯性を重視する人 |
| シートバッグ | 容量の選択肢が豊富、使わない時は外せる | 荷物の出し入れがやや面倒、防犯性が低い | キャンプなど大量の荷物を積みたい人 |
| サイドバッグ | 重心を低く保てる、シート上を空けられる | タイヤへの巻き込み注意、幅が広くなる | 重い荷物を運びたい、シートバッグと併用したい人 |
積載する際は、重い荷物はできるだけ車体の中心に近い、低い位置に積むのが鉄則です。重量バランスが崩れると走行安定性に大きく影響するため、特にサイドバッグを使用する際は、左右の重さが均等になるように細心の注意を払いましょう。
キャンプも可能な積載カスタムとは

「スクーターでキャンプツーリング」と聞くと、積載量の問題から実現が難しいように感じるかもしれませんが、PCXの潜在能力を最大限に引き出すカスタムとパッキングの工夫を凝らせば、快適なキャンプツーリングは十分に実現可能です。
キャンプツーリングの成否を分けるのは、いかに多くのキャンプ道具を安全かつ効率的に積載できるかにかかっています。その中心的な役割を担うのが、大容量の「シートバッグ」です。市場には容量が75Lクラスにもなるキャンプツーリングに特化した製品が存在し、これ一つでテント、寝袋、マットといった、いわゆる「キャンプ三種の神器」を始めとする基本的なキャンプ道具一式を収納できます。
これに加えて、前述の「リアボックス」を併用するのが理想的なスタイルです。例えば、45Lのリアボックスと75Lのシートバッグを組み合わせれば、それだけで合計120Lの積載容量が生まれます。さらにPCXが標準で備えるシート下収納約30Lも活用すれば、実に150Lもの広大なスペースを確保できます。この容量があれば、調理器具(クッカー)やランタン、着替え、食料なども十分に持ち運ぶことができるでしょう。
もし、さらなる積載量を求めるのであれば、「サイドバッグ」を追加することも可能です。左右にそれぞれ20L程度のサイドバッグを装着すれば、合計で200Lに迫る積載量となり、冬用の装備など、よりかさばる道具が必要な場合や、長期のツーリングにも対応できます。
ただし、これだけ多くの荷物を積む際には、いくつかの重要な注意点があります。
第一に、積載量が増えるほど車体の重心が高くなり、走行安定性に影響が出ることです。特にコーナリングや発進・停止時、低速でのUターンなどではバランスを崩しやすくなるため、いつも以上に慎重で丁寧な運転が求められます。
第二に、荷物の固定は確実に行う必要があります。走行中の振動でベルトが緩むこともあるため、休憩のたびに緩みがないか確認する習慣をつけましょう。
最後に、バッグがカウルと擦れて傷が付くのを防ぐため、あらかじめ接触が予想される部分に、バイク用の保護フィルムやホームセンターで手に入る養生テープを貼っておくといった工夫も、愛車を綺麗に保つためには大切です。
快適性を上げるスクリーンとシート
長距離ツーリングにおいて、ライダーの疲労を軽減し、旅の楽しさを維持するためには「快適性」が非常に重要な要素となります。数あるカスタムパーツの中でも、PCXのツーリング性能を格段に向上させるアイテムとして、特に効果が大きいのが「ロングスクリーン」と「カスタムシート」の2つです。この2点は、一度体験すると元には戻れないほどの変化をもたらします。
ロングスクリーンの絶大な効果:見えない壁があなたを守る
PCXの純正スクリーンは、車体との一体感を重視したスタイリッシュなデザインですが、防風性能という点では最小限の機能しかありません。これを大型のロングスクリーンに交換することで、ライダーの上半身、特に胸から顔にかけて直接当たる走行風を大幅にカットできます。
走行風は、常にライダーの体を押し続ける見えない力です。この力に無意識に抵抗することで体力を消耗し、また体温を奪っていくため、長時間の走行では想像以上に疲労が蓄積します。ロングスクリーンは、この風圧からライダーを解放してくれる「見えない壁」の役割を果たします。これにより、風圧による直接的な疲労が大きく軽減されるだけでなく、高速走行時の安定感も増します。
さらに、冬場の冷たい風による体温の低下を防いだり、突然の小雨から体を守ってくれたりする効果も見逃せません。夏場には、顔やウェアに直接衝突してくる不快な虫を防ぐ役割も果たしてくれます。
シートカスタムで痛み知らず:旅の質は座面で決まる
PCXツーリングで多くのライダーが直面する最大の敵が、長時間の乗車によるお尻の痛みです。この問題を解決するのがシートのカスタムに他なりません。
最も手軽な方法は、純正シートの上にゲル素材を内蔵したクッション(通称ゲルザブ)を敷くことです。これだけでもシートに当たるお尻の圧力が効果的に分散され、痛みの発生を大幅に遅らせることができます。
より根本的な解決策としては、シートそのものを社外品のコンフォートシートに交換する方法があります。これらの製品は、内部のウレタン素材が衝撃吸収性や体圧分散に優れた材質や構造に変更されています。また、ライダーのお尻の形に合わせて座面が立体的に成形されていたり、滑りにくい表皮が採用されていたりすることで、体のホールド感が向上し、ライディングポジションそのものが楽になる効果も期待できます。
これらのカスタムは、見た目の変化以上に、ツーリングの質そのものを大きく左右します。特に一日で数百キロを走るような本格的なツーリングを計画しているなら、何よりも優先的に検討する価値のあるカスタムと言えるでしょう。
驚きの燃費性能と航続距離

PCXがツーリングバイクとして持つ隠れた、しかし非常に強力な武器が、その卓越した燃費性能と、それに伴う長い航続距離です。この圧倒的な経済性と信頼性が、ツーリングの計画にこれ以上ないほどの自由度と大きな安心感をもたらします。
PCXの燃費は、ライダーのアクセルワークや走行する道路状況によって変動しますが、信号の少ない郊外の道を時速50kmから60km程度で気持ちよく巡航していると、リッターあたり50kmを超える素晴らしい数値を記録することも珍しくありません。これは同クラスのスクーターの中でもトップクラスの性能であり、大排気量のツーリングバイクと比較すれば、その差は歴然です。
この優れた燃費性能と、8.1Lというクラス最大級の燃料タンク容量が組み合わさることで、驚異的な航続距離が生まれます。単純計算では「50km/L × 8.1L = 405km」となります。もちろん、常に最高の燃費で走れるわけではありませんが、より現実的なツーリングシーンにおいても、無給油で300km以上を安心して走行できる航続距離を誇ります。これは、東京から名古屋までの距離に匹敵します。
この長い航続距離は、ツーリングにおいて絶大なメリットとなります。例えば、美しい景色が広がる山間部や、海岸線の道路など、ガソリンスタンドが少ない、あるいは営業時間が短いエリアを走行する際も、ガス欠の心配をせずに心ゆくまで走り続けることができます。頻繁に給油のためにルートを外れたり、残りの燃料を気にしながら走ったりする必要がないため、純粋にライディングや目の前の景色に集中できるのです。
また、燃料費を劇的に低く抑えられることも、長距離・長期間のツーリングでは大きな利点となります。例えば、1000kmのツーリングを考えた場合、リッター20kmのバイクとの比較では、実に30Lものガソリンを節約できる計算になります。浮いたガソリン代を、旅先の美味しい食事や観光、あるいは家族へのお土産代に充てることで、旅全体の満足度をさらに高めることにもつながります。物理的な疲労だけでなく、ガス欠に対する心理的なプレッシャーから解放される点こそ、PCXがツーリングで提供する大きな価値の一つなのです。
総括:自分らしいPCX ツーリングの始め方
この記事で解説したPCXでのツーリングに関する情報を、最後に箇条書きでまとめます。
- PCXツーリングがダサいという評価は主にデザインやユーザー層のイメージに起因する
- 実際にはカスタム次第でスタイリッシュな外観を実現可能
- 長距離走行がきつい原因はシートの硬さ、パワー、風の影響
- 疲労対策にはカスタムシートやロングスクリーンが極めて有効
- 125ccは下道中心、160ccは高速道路も利用可能で行動範囲が広い
- PCX160の高速走行は走行車線を80〜90km/hで巡航するのが快適
- 無理な追い越しは避け、あくまで移動手段と考えるのが賢明
- 手軽な取り回しや優れた燃費性能がPCXツーリングの大きな魅力
- シート下の収納に加え、リアボックスやシートバッグで積載量を大幅に増やせる
- 大容量バッグを組み合わせればキャンプツーリングも十分に楽しめる
- 積載時は重量バランスに注意し、安全運転を心がける
- 驚異的な燃費はガソリン代の節約と精神的な安心感につながる
- 無給油で300km以上走れる航続距離はツーリングで大きな武器となる
- 速さだけではない「トコトコ走る楽しさ」がスクーターツーリングの醍醐味
- 自分のスタイルに合わせたカスタムと計画でPCXツーリングは最高の趣味になる
