「えっ、ベンリィ110って生産終了したの? 次の新車はもう出ないって本当?」
衝撃的な事実ですが、かつてビジネスバイクの王様として君臨した「ガソリンエンジンのベンリィ110」に、私たちが期待するような直接的な後継機は存在しません。
こんにちは。デジタルバイクライブラリー、運営者の「ゆう」です。
毎日の配送業務や通勤の足として、雨の日も風の日も働き続けてくれたベンリィ110。
そろそろ入れ替え時期かなと思って検索してみたら、どこにも新車が売っていない…。そんな絶望的な状況に直面している方が、今まさにこの記事を読んでいるのではないでしょうか。
ネット上では「ヤマハからギア125が出るらしい」「新型は電動になる」といった噂が飛び交っていますが、現場で働く私たちにとって重要なのは「明日からの仕事をどうするか」という現実的な答えですよね。
2026年の排ガス規制という巨大な壁を前に、私たちはどのバイクを選べば正解なのでしょうか。
この記事では、業界の動向や技術的な背景を深掘りしつつ、ベンリィ難民となってしまった私たちが取るべき「生存戦略」を徹底的に解説します。
- ベンリィ110の実質的な後継モデルが存在しない理由とその背景
- 噂されているヤマハの競合車種や新基準原付の可能性について
- 電動バイクBenly e:の実用性とガソリン車との決定的な違い
- カブプロへの乗り換えや中古車購入など具体的な解決策の提案
ベンリィ110の後継が不在である理由

なぜ、これほどまでに現場から愛され、需要があるバイクが消えなければならないのでしょうか。単なる「モデルチェンジの谷間」であればどれほど良かったでしょう。しかし、現状はもっと深刻です。まずは、メーカーが抱える事情と、時代の変化という抗えない波について詳しく見ていきましょう。
2025年排ガス規制と生産終了の背景
ベンリィ110が生産終了に至った最大の、そして決定的な要因は、環境規制の劇的な強化です。具体的には、日本国内で2025年(令和7年)を目処に適用される次期排ガス規制が関係しています。
「排ガス規制なんて昔からあるじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、今回の規制レベルは、小排気量の空冷エンジンにとっては「技術的な限界」を超えさせるほど厳しいものなんです。これまでのようにマフラーに触媒(キャタライザー)を詰め込むだけではクリアできず、エンジンの燃焼そのものをコンピューターで超精密に制御したり、高価な水冷システムを導入したりする必要があります。
ここで問題になるのが「コスト」です。ビジネスバイクの命は、導入コストの安さとメンテナンスのしやすさですよね。規制をクリアするためにハイテク装備を満載すれば、車両価格は跳ね上がります。30万円、40万円もする原付二種のビジネス車を、果たして誰が買うでしょうか?
メーカーの苦渋の決断
ホンダとしても、採算が取れない車両を作り続けることはできません。さらに、兄弟車である「ベンリィ50」も、原付一種の市場縮小とともに消滅しました。共通の車体フレームを使っていた50ccモデルがなくなることで、110ccモデル単独のために生産ラインを維持することが経済的に不可能になったという側面も見逃せません。
これに加えて、2020年代初頭のパンデミックによるサプライチェーンの寸断が追い打ちをかけました。部品が入ってこない、作れない、売れない。この負の連鎖の中で、ホンダは「ガソリン車のベンリィを改良して延命する」という選択肢を捨て、「電動化へリソースを全振りする」という経営判断を下したのです。これは一時的な中断ではなく、内燃機関時代の終わりを告げる決定だったと言えます。
ヤマハやギア125の発売日はあるか
「ホンダが作らないなら、ライバルのヤマハが作ってくれるんじゃないか?」
そう期待して「Gear 125」といったキーワードで検索を繰り返している方も多いはずです。確かに、ヤマハの「ギア(GEAR)」は50ccクラスで最強の耐久性を誇る名車ですし、もし125cc版が出れば間違いなく大ヒットするでしょう。
しかし、私の見解としては、ヤマハから125ccのビジネススクーターが発売される可能性は限りなくゼロに近いと考えています。
なぜヤマハは動かないのか?
最大の理由は、ホンダとヤマハが現在、原付一種クラスの生産・開発において「協業(提携)」関係にあるからです。実は、現在販売されている50ccの「ヤマハ・ジョグ」などは、ホンダが製造してOEM供給しているものなんです。かつてのライバル同士が手を組むほど、小排気量バイクの市場は厳しい状況にあります。
さらに、両社は電動バイクのバッテリー規格「ガチャコ(Gachaco)」の標準化でもガッチリ手を組んでいます。電動化の未来に向けて足並みを揃えている中で、ヤマハだけが独自に巨額の開発費を投じて、排ガス規制対応のガソリンエンジン車を新規開発するとは考えにくいのです。
ネット上の噂にご注意を
YouTubeなどで「Yamaha Gear Ultima 125 Hybrid 発売!」といったサムネイルを見かけることがありますが、これらは海外のデザイナーが勝手に作ったCGや、東南アジア向けの全く異なるモデル(Fazzioなど)をベースにしたフェイク情報であるケースがほとんどです。
公式なアナウンスがない以上、ヤマハに過度な期待を寄せて待ち続けるのは、ビジネスの現場においてはリスクが高すぎると言わざるを得ません。
電動化へ舵を切ったホンダの戦略
ホンダがガソリン車のベンリィを終了させた裏には、明確な「勝算」と「ビジョン」があります。それが、2040年代に向けた完全なカーボンニュートラル化計画です。ホンダは、二輪車の電動化において、趣味性の高いスポーツバイクよりも、まずは配送業務などのB2B(ビジネス)領域からEV化を進める戦略を明確に打ち出しています。
ビジネスバイクがEVの実験場?
誤解を恐れずに言えば、ビジネスバイクはEVシフトに最も適したカテゴリーなんです。
- ルートが決まっている: 走行距離が予測しやすく、「電欠」のリスクを管理しやすい。
- 拠点に戻る: 配送センターや店舗に戻るたびに、バッテリー交換のチャンスがある。
- 企業イメージ: 電動バイクを導入することで、「環境に配慮している企業」というPRができる。
ホンダはこの市場に向けて、着脱式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を核としたエコシステムを構築しようとしています。車両単体を売るのではなく、バッテリーを交換しながら走り続ける「システム全体」を普及させたいわけです。
(出典:本田技研工業『Hondaのカーボンニュートラル実現に向けた電動化戦略とは?』)
つまり、現在販売されている電動バイク「Benly e:(ベンリィ イー)」シリーズこそが、ホンダが考える「真の後継機」なのです。「ガソリンエンジンの新型が出ないかな」と待つことは、ガラケーの新型を待ち続けるようなもので、メーカーの時計の針は完全に戻らないところまで進んでしまっています。
新基準原付は125ccの代用不可
最近ニュースで話題になっている「新基準原付」についても触れておかなければなりません。「125ccのバイクが原付免許で乗れるようになる!」という見出しを見て、「おっ、これで解決じゃん!」と思った方は、ちょっと待ってください。そこには大きな落とし穴があります。
新基準原付は、ベンリィ110の代わりには絶対になりません。
そもそも「新基準原付」とは、排ガス規制をクリアできなくなった50ccエンジンの代わりに、110ccや125ccのエンジンを積みつつ、最高出力を50cc並み(4kW以下)に電子制御でデチューン(性能制限)した車両のことを指します。
パワー不足は致命的
ベンリィ110の最高出力は、約7.9馬力(5.8kW)ありました。これに対し、新基準原付は4kW(約5.4馬力)以下に抑えられます。車体は110ccクラスの重さがあるのに、パワーは原付一種並み。これで何が起きるか想像できますか?
実際の現場で起こりうること
- 重い荷物を満載した状態で、急な坂道を登れない。
- 幹線道路での合流で加速が足りず、危険な思いをする。
- 法定速度は30km/hのまま(原付一種扱いなので)。
新基準原付は、あくまで「生活の足としての原付」を残すための救済措置であり、過酷なビジネスユースでベンリィ110と同等のパフォーマンスを発揮することを想定したものではありません。これを後継機として導入してしまうと、現場のドライバーから「遅くて走れない!」とクレームの嵐になることは目に見えています。
10Lタンクなどのスペック比較
失って初めて気づく大切さとはよく言ったもので、ベンリィ110のスペックを改めて見直すと、その異常なまでの「完成度」に驚かされます。特に、ビジネスにおいて最も重要な「稼働時間」を支えていたのが、クラス最大級の10リットル燃料タンクです。
ここで、ライバルとなる車種や後継候補と、スペックを徹底比較してみましょう。
| 比較項目 | ベンリィ110 (JA09) | スーパーカブ110 Pro | Benly e: II (電動) | PCX (参考) |
|---|---|---|---|---|
| 燃料タンク / 電源 | 10.0L | 4.1L | バッテリー2個 | 8.1L |
| 実用航続距離 | 約350km〜400km | 約200km前後 | 約30km〜40km | 約350km |
| 変速方式 | Vマチック (AT) | 4段リターン (要操作) | 電動 (AT) | Vマチック (AT) |
| 積載性 | 巨大リアデッキ+低床 | 大型リアキャリア | 巨大リアデッキ+低床 | 乗用設計 (積載不向き) |
一目瞭然ですね。ベンリィ110の10Lタンクは、燃費35km/L〜40km/Lで計算しても、一度の給油で東京から名古屋の手前まで行けるほどの航続距離を叩き出します。
現場において「給油」という行為はダウンタイム(無駄な時間)そのものです。毎日ガソリンスタンドに寄る必要があるカブ(4.1Lタンク)と、3日に1回で済むベンリィでは、年間で換算すると数千分もの業務時間の差が生まれます。また、「ガス欠」の恐怖に怯えずに仕事に集中できる心理的安全性も、この10Lタンクがもたらしていた大きな恩恵だったのです。
ベンリィ110の後継として選ぶべき道

ここまで、いかにベンリィ110が唯一無二の存在だったかを語ってきましたが、嘆いていても新車は出てきません。ここからは思考を切り替えて、「じゃあ、現実にどうするか」という具体的なアクションプランを提示します。あなたの業務スタイルや予算に合わせて、最適な「次の一手」を選んでください。
Benly e:の航続距離と実用性
まず検討すべきは、ホンダが提示する正規ルート、つまり電動の「Benly e: II(ベンリィ イー ツー)」への移行です。
車体構成はガソリン車のベンリィをベースにしているため、低い荷台、足元のフラットスペース、取り回しの良さはそのまま継承されています。実際に乗ってみると、モーター特有のトルクで、重い荷物を積んでいても発進が驚くほどスムーズです。振動も音もないので、長時間の配送でも身体への疲労感が段違いに少ないのは大きなメリットです。
ただし、航続距離の壁は厚い
最大の懸念点は、やはり航続距離です。メーカー公表値(定地走行)では50km以上となっていますが、ストップ&ゴーを繰り返し、重量物を積載し、さらに冬場の寒さでバッテリー性能が低下する…といったリアルな条件下では、実用航続距離は30km〜40km程度と見ておくのが安全です。
運用シミュレーション
例えば、午前中に20km走り、昼休憩で拠点に戻ってバッテリーを交換。午後にまた20km走る。といった運用の新聞配達や郵便配送には最適です。
逆に言えば、一日中街を走り回るウーバーイーツのようなフードデリバリーや、拠点に戻らない広域メンテナンス業務には向きません。予備のバッテリー(1個約10kgを2個)をバックパックに入れて背負うなんて現実的ではありませんからね。
スーパーカブ110プロへの乗り換え
「EVはまだ時期尚早だ」「どうしてもガソリン車で、しかも新車がいい」という方にとって、消去法で残る最強の選択肢が「スーパーカブ110 プロ(Super Cub 110 Pro)」です。
世界で最も売れたバイクであるカブシリーズのプロ仕様。その信頼性は折り紙付きです。最新のキャストホイールとチューブレスタイヤ、ディスクブレーキを装備し、足回りのスペックはベンリィよりも進化しています。14インチの大径ホイールは段差の乗り越えも楽々で、走破性はベンリィ以上と言えるでしょう。
もしあなたがカブへの乗り換えを検討するなら、以下の記事も参考になるかもしれません。
ベンリィユーザーが直面する2つの壁
しかし、スクーター(AT)であるベンリィに慣れきった体には、カブへの移行には2つのハードルがあります。
- 変速操作(ギアチェンジ): カブはAT限定免許で乗れますが、左足でのギア操作が必要です。忙しい配送中にガチャガチャと操作をするのを「面倒くさい」と感じるスタッフは多いでしょう。また、靴のつま先が傷むのも地味な悩みです。
- 積載スペースの減少: カブは車体をまたいで乗る構造上、足元に荷物を置けません。ベンリィなら足元に置けていた大きめのバッグや段ボールをどうするか、積載の工夫が求められます。
それでも、リッター60kmを超える驚異的な燃費と、壊れにくさはビジネスの強い味方です。「慣れ」さえ解決できれば、経済的には最も優れた選択肢になります。
中古市場の価格高騰と在庫状況
「ギアチェンジは嫌だ、EVも無理だ。やっぱりベンリィ110がいい!」
そう考える人はあなただけではありません。その結果、現在の中古車市場ではベンリィ110の価格が高騰する事態になっています。
大手中古車サイトやオークション相場を見ると、走行距離が少なく状態の良い「極上車」は、新車当時の定価とほぼ変わらない25万円〜30万円前後で取引されることもあります。走行距離が3万キロ、4万キロを超えた車両でも、10万円以上の値がつくことがザラです。
中古車購入のリスク管理
ビジネスバイクの中古車は、前オーナーに過酷に使われていた可能性が高いです。
- 駆動系: Vベルトやウエイトローラーは交換されているか?
- エンジン音: カタカタという異音(クランクベアリングの摩耗など)はしていないか?
- オイル管理: オイル交換をサボって真っ黒なオイルが入っていないか?
安いからといって現状販売のボロボロの車両を買うと、修理代で結局高くつきます。購入するなら、しっかりと整備記録が残っている車両や、保証が付く信頼できるバイクショップで探すことを強くおすすめします。
フードデリバリー等の用途別推奨
長くなってしまいましたが、最後に「結局、自分は何を選べばいいの?」という問いに対して、用途別のファイナルアンサーを提示します。
【タイプA】フードデリバリー・個人事業主の方
推奨:良質な中古のベンリィ110 > スーパーカブ110プロ
1日の走行距離が長く、給油の時間を惜しむあなたには、やはり10Lタンクのベンリィ110が最強です。多少高くても状態の良い中古を探し、大切にメンテナンスして乗り続けるのが、結果的に一番稼げる選択になるでしょう。カブプロにする場合は、ギア操作の習熟期間を見込んでおきましょう。
【タイプB】新聞販売店・郵便・定ルート配送の方
推奨:Benly e:(電動)シリーズ
走行ルートが決まっていて、拠点に戻れるならEVへの転換期です。早朝や深夜の住宅街でも無音で走れるメリットは計り知れません。クレーム対策にもなりますし、ガソリン代の経費精算の手間もなくなります。
【タイプC】とにかくコスト重視・小規模店舗の方
推奨:スーパーカブ110プロ
中古相場が高騰しているベンリィを買うより、新車でカブプロを買って10年乗る方が、トータルコスト(TCO)は圧倒的に安くなります。耐久性と燃費で右に出るものはありません。
よくある質問:ベンリィ110後継・代替機選びの疑問

最後に、読者の皆様からよく寄せられる疑問について、Q&A形式で回答します。
- 新車のベンリィ110は、まだどこかの店舗に残っていませんか?
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残念ながら、新車を見つけるのはほぼ絶望的です。
生産終了から時間が経過しており、正規販売店の在庫はほぼ払底しています。もし奇跡的に新車(未登録車)が見つかったとしても、定価を大きく上回るプレミア価格になっている可能性が高いです。「新車」にこだわるあまり高額な出費をするよりは、状態の良い中古車やカブプロへの切り替えを検討することをおすすめします。
- 台湾製(SYMやKYMCO)のビジネスバイクは選択肢に入りませんか?
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スペックは魅力的ですが、ビジネス用途ではリスクがあります。
海外メーカーのスクーターは安価でパワフルなものもありますが、仕事で使うバイクにとって最も重要なのは「壊れた時にすぐ直せるか」です。部品の取り寄せに数週間かかったり、近所のバイク屋さんで修理を断られたりすると、その間仕事ができなくなってしまいます。メンテナンス体制が確保できる場合を除き、基本的には国産メーカー(ホンダ・ヤマハ・スズキ)を選ぶのが無難です。
- ベンリィe:(電動)のバッテリー交換費用が心配です。
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基本的には「リース契約」を利用するため、購入費用の心配は不要です。
Benly e: シリーズで使用するバッテリー(Honda Mobile Power Pack e:)は非常に高価ですが、ホンダは法人向けにバッテリーのリースプランや、交換ステーションサービス(Gachaco)を展開しています。これらを利用すれば、劣化したバッテリーは交換対象となるため、「数年後に数十万円のバッテリー代がかかる」といった事態は避けられます。導入前に、最寄りのホンダビジネスバイク取扱店でプランを確認してみてください。
- 今乗っているベンリィ110を修理して乗り続けるか迷っています。
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エンジンが焼き付いていない限り、「修理して延命」が経済的です。
現在の中古相場の高騰ぶりを考えると、多少修理費がかかっても今の車体を維持する価値は十分にあります。例えば、Vベルトやクラッチの交換、タイヤ交換などで5万円〜10万円かかったとしても、怪しい中古車を20万円で買うよりはずっと低リスクです。信頼できるショップに相談し、徹底的にメンテナンスして乗り潰すのが、今の時期における賢い選択だと言えます。
ベンリィ110の後継選びの最終結論
ベンリィ110の後継問題について、様々な角度から検証してきました。結論として言えるのは、「かつてのベンリィ110のように、安くて、便利で、どこまでも走れる魔法のようなスクーターは、もう二度と発売されない」という残酷な現実です。
私たちは今、100年に一度のモビリティ革命の過渡期にいます。この変化の波に飲まれることなく生き残るためには、自分のビジネススタイルを見つめ直し、「不便を受け入れてEVに挑戦するか」「技術を習得してカブに乗るか」「コストを払って過去の遺産(中古)を守るか」の決断を下さなければなりません。
この記事が、あなたの相棒となる「次のバイク」選びの助けになれば幸いです。どの道を選んでも、安全運転で良い仕事を続けていきましょう!
※本記事の情報は2026年1月執筆時点のものです。補助金制度や車両価格、メーカーの最新動向については、必ず各メーカー公式サイトや自治体の案内をご確認ください。
