「クロスカブの積載量は、実は足元が『ゼロ』である」という致命的な弱点に、あなたはもうお気づきでしょうか?
リアキャリアは広大ですが、走行中にサッと荷物を取り出すことはできません。重い荷物を後ろに積みすぎれば、フロントが浮き気味になりハンドリングも悪化します。
「あと少し、手の届く範囲に荷物が置ければ……」この切実な悩みを解決する唯一の手段がセンターキャリアです。しかし、安易に選ぶと「錆びてボロボロになる」「エンジンのネジ山を破壊する」という取り返しのつかない事態を招くことも。
デジタルバイクライブラリー、運営者の「ゆう」です。
今回は、数あるカスタムパーツの中でも特に満足度の高い「センターキャリア」について、メーカーごとの設計思想の違いから、絶対に失敗しない取り付けの極意まで、徹底的に深掘りします。
- 自分のスタイルに合致した「失敗しないキャリア」の選び方がわかる
- キャンプ、通勤、カスタムなど目的別の最強モデルとその根拠を理解できる
- エンジンを破損させるリスクを回避する「正しい取り付け手順」を習得できる
- ニーグリップ効果による「人馬一体」の走行性能向上を実感できる
目的別クロスカブのセンターキャリアおすすめ選定ガイド

「センターキャリアなんてどれも同じ鉄の棒でしょ?」と思っているなら、それは大きな誤解です。各メーカーは、ユーザーの「どんな不便を解消したいか」というインサイトに合わせて、全く異なる設計思想で製品を開発しています。ここでは、あなたのライフスタイルに合致した「正解」を導き出すための詳細な選定ガイドをお届けします。
積載量重視ならキジマが最強でキャンプも安心
あなたがもし、人里離れたキャンプ場へ向かう本格的なツアラーであれば、選択肢は事実上キジマ(KIJIMA)一択と言っても過言ではありません。
この製品が「最強」と謳われる理由は、その圧倒的な最大積載量「5.0kg」にあります。競合他社の多くが安全マージンを考慮して1.0kg〜2.0kg程度に制限している中、キジマ製はその倍以上の数値を公称しています。この差は、実際のキャンプシーンで決定的な違いとなって現れます。
例えば、真夏のキャンプツーリングを想像してみてください。現地での飲料水確保に不安がある場合、2リットルのペットボトル(約2kg)を積載する必要があります。さらに、万が一のガス欠に備えた予備燃料携行缶(1リットル缶で約1kg強)、そして愛車を守るための頑丈なチェーンロック(約1〜2kg)。これらを合計すると、容易に4kg〜5kgに達してしまいます。他社製キャリアでは完全に重量オーバーとなるこれらの装備も、キジマ製ならば余裕を持って受け止めることができるのです。
| メーカー | 最大積載量 | 主な用途 |
|---|---|---|
| キジマ | 5.0kg | 重量物積載、キャンプ |
| エンデュランス | 2.0kg | ガジェット装着、通勤 |
| SP武川 | 1.0kg | ドレスアップ、軽量物 |
この剛性の高さは、太めのスチールパイプをトラス状に組んだ構造と、荷重を効率よくフレームに逃がす取り付けステーの設計によるものです。天板サイズも縦320mm×横240mmと広く確保されており、嵩張るテント用マットや寝袋を括り付けても安定感は抜群です。「とにかくタフに使いたい」というヘビーユーザーの期待に、これ以上なく応えてくれる製品です。
スマホ装着ならエンデュランスの機能性が高い
毎日の通勤や、知らない土地へのツーリングで「スマートフォンのナビ」が手放せない現代のライダーにとって、エンデュランス(ENDURANCE)のマルチセンターキャリアは、まさに「コックピットの革命」とも言える存在です。
クロスカブのハンドル周りは、メーターバイザーや各種ケーブル類が密集しており、実はガジェットを取り付けるスペースが非常に限られています。「スマホホルダーを付けたいけれど、場所がない」「USB電源のポートが干渉してしまう」といった悩みを持つオーナーは少なくありません。エンデュランスはこの問題に対し、キャリアの一部に一般的なハンドルバーと同じ径である「Φ22.2mmのパイプ」を採用するというアイデアで解決を図りました。
これにより、センターキャリアが単なる荷台ではなく、「第2のハンドルバー」として機能するようになります。視線を大きく落とさずに確認できるセンター位置にスマホをマウントできるため、安全性も向上します。さらに、GoProなどのアクションカメラを設置すれば、メーター越しの迫力ある走行動画を撮影することも可能です。
工学的に誠実な設計スペック
エンデュランス製キャリアの全体積載量は2.0kgですが、特筆すべきは「マルチバー部分は0.5kgまで」という詳細な指定がある点です。これは、スマートフォンの重量に加え、走行中の振動によって発生するモーメント荷重まで精密に計算されている証拠です。
また、コンビニフック機能も維持されており、ヘルメットホルダーの移設も考慮されているなど、日常の使い勝手が徹底的に考え抜かれています。適合車種もクロスカブ50から110、さらにはスーパーカブまで幅広く対応しており、設計の優秀さが伺えます。
カスタム重視ならSP武川の美しい塗装が魅力
「荷物を満載にする予定はない。それよりも、愛車の美しいシルエットを崩したくない」という美学を持つカスタム派の方には、SP武川(SPECIAL PARTS TAKEGAWA)のセンターキャリアキットが最適解となります。
SP武川は、モンキーやゴリラといった4ミニ(4ストロークミニバイク)カスタムの世界で長年トップを走り続けてきたブランドです。その製品作りには、機能性だけでなく「装着した時の美しさ」へのこだわりが強く反映されています。アルミ製やブラック塗装の仕上げは非常に質感が高く、純正パーツ以上の高級感を演出します。クロスカブが持つクラシカルでタフなイメージを損なうことなく、さりげなく積載スペースを追加できる点は、デザインにこだわるオーナーにとって大きな魅力でしょう。
積載荷重1.0kgの意味
SP武川製の推奨積載荷重は「1.0kg」と、今回紹介する中では最も低い数値となっています。しかし、これは製品が脆いわけではありません。エンジンの振動がフレームやキャリアに与える影響を考慮し、安全マージンを大きく取った結果です。重いキャンプ道具を積むのではなく、レインウェアやグローブ、帽子といった「軽量だが嵩張るもの」をスマートに置くためのスペースとして割り切った使い方が求められます。
また、JA10型には不可、CD90エンジン用など、適合に関する情報も詳細に開示されており、誤購入を防ぐ配慮も行き届いています。信頼性の高いブランドパーツで、大人のカスタムを楽しみたい方におすすめです。
錆に強いステンレス製アウトスタンディング
日本は四方を海に囲まれた島国であり、沿岸部に住むライダーや、雨の日でも通勤に使わなければならないヘビーユーザーにとって、鉄パーツの最大の敵は「酸化(サビ)」です。そんな過酷な環境下でクロスカブを酷使する方には、アウトスタンディング(OUT-STANDING)などで扱われているステンレス製キャリアを強く推奨します。
一般的なスチール製のキャリアは、どれほど厚い塗装(パウダーコート等)が施されていても、飛び石や荷物のフックとの摩擦で塗装が剥がれれば、そこから水分と酸素が侵入し、瞬く間に赤錆が発生します。対して、ステンレス(特にSUS304などのオーステナイト系)は、素材自体がクロムによる不働態皮膜を形成するため、圧倒的な耐食性を誇ります。「いつの間にかキャリアの根元が錆びて茶色くなっていた」という悲劇を未然に防ぎ、長期間にわたって美しい輝きを維持できるのです。
さらに、このタイプのキャリアは伝統的な「ベトナムキャリア(通称:ベトキャリ)」のスタイルを踏襲しているものが多く、バネ式のバインダー(挟み込み装置)を備えています。これは元々、ベトナムなどの東南アジアで地図や書類を風で飛ばされないように挟むために発達した機能です。日本のツーリングシーンでも、有料道路のチケットや観光パンフレットをサッと挟むのに重宝します。クラシカルなカブのスタイルと実用性を兼ね備えた、玄人好みの選択と言えるでしょう。
センターキャリアバッグでカッパ収納を解決
センターキャリアを導入した後に多くのライダーが直面するのが、「で、ここに何をどうやって置くの?」という問題です。このスペースを最大限に活かすためのベストプラクティスは、やはり「センターキャリアバッグ」の活用です。
センターキャリアの位置は、走行中でもライダーの膝の間にあり、信号待ちなどの停車時にシートから降りることなくアクセスできる唯一の積載スペースです。ここには、頻繁に出し入れするアイテムや、緊急時に即座に取り出したいアイテムを収納するのが鉄則です。
センターキャリアバッグの「三種の神器」
- レインウェア(カッパ):急なゲリラ豪雨でも、バイクを降りてリアボックスを開けることなく、サッと取り出して着用できます。
- 登録書類・自賠責証書:濡らしたくない重要書類を防水バッグに入れておけば安心ですし、検問等でもスムーズに提示できます。
- 予備工具・ウエス:ちょっとした調整や、汚れを拭き取るための道具を常備しておくのに最適なサイズ感です。
専用品も販売されていますが、多くのアウトドアブランドから出ている円筒形の防水スタッフバッグを、ゴムネットや結束バンドで固定する方法も人気です。価格も1,000円〜3,000円程度で手に入るため、キャリアとセットで導入することで、クロスカブの利便性は飛躍的に向上します。
クロスカブのセンターキャリアおすすめの取り付け方

お気に入りのキャリアが見つかったら、次はいよいよ愛車への取り付けです。「プラモデル感覚でできるでしょ?」と軽く考えていると、思わぬ落とし穴にハマる可能性があります。ここでは、あなたの大切なクロスカブを傷つけないための、プロ級の取り付けノウハウを伝授します。
取り付け難易度は?自分で作業する前の注意点
作業自体の難易度で言えば、センターキャリアの取り付けは「かんたん〜ふつう」に分類されます。必要な工具さえあれば、早ければ15分、慎重にやっても30分程度で完了するでしょう。しかし、その「簡単さ」の裏に、エンジンを破損させるリスクが潜んでいることを知っておかなければなりません。
多くのセンターキャリアは、車体の左右にある「レッグシールド」を固定しているボルト穴と、エンジンの「クランクケースカバー」を固定しているボルト穴を利用して共締め(友締め)を行います。ここで最も注意すべきは、「ボルトの長さ」と「締め付けトルク」です。
付属のボルトは、純正ボルトよりもキャリアの厚み分だけ長くなっています。これを間違えて短い純正ボルトのまま締めようとすると、ネジ山のかかりが浅くなり、走行中の振動で脱落する危険があります。逆に長すぎるボルトを無理にねじ込むと、エンジンのケースを突き破る恐れもあります。説明書にあるボルトの配置図を必ず確認し、一本一本長さを照合してから作業に入ることが、トラブル回避の第一歩です。
ニーグリップ効果でクロスカブの操作性が向上
センターキャリアの導入は、単なる積載量の増加以上の恩恵をライダーにもたらします。それは、スポーツライディングの基本である「ニーグリップ」が可能になるという点です。
カブシリーズの特徴的なアンダーボーンフレームは、乗り降りがしやすい反面、タンクを膝で挟んで体を固定することができません。そのため、コーナリング中や急ブレーキ時に下半身が不安定になりやすく、どうしてもハンドルを握る腕に余計な力が入ってしまいがちです。これが長距離ツーリングでの肩こりや疲労の原因となります。
しかし、センターキャリアを取り付けることで、物理的に膝で挟み込める「壁」が足元に生まれます。さらに、市販の「ニーグリップパッド」や「ニーグリッププレート」をキャリア側面に装着すれば、その効果は絶大です。2点支持(ハンドル・ステップ)から3点支持(ハンドル・ステップ・ニーグリップ)へと変化することで、車体との一体感が劇的に向上します。カーブでの安定感が増し、リラックスして走れるようになるため、「もっと遠くまで走りたい」と思えるようになるはずです。
荷物の固定方法と落下防止のテクニック
センターキャリアはライダーの足元という特殊な位置にあるため、荷物の固定にはリアキャリア以上に神経を使う必要があります。万が一、走行中に荷物が崩れてブレーキペダルの下に挟まれば、ブレーキが踏めなくなるという重大な事故に直結するからです。
安全な固定のためには、100円ショップの自転車用ゴム紐ではなく、オートバイ専用の耐久性の高いツーリングネットや、長さを調整できるロックストラップを使用してください。特に、バッグを恒久的に設置する場合は、キャリアの格子状の隙間を利用して、ボルトとナット、あるいは耐候性のある結束バンド(インシュロック)でガチガチに固定してしまうのが最も安全です。
出発前の安全チェックルーティン
- ペダル干渉確認:リアブレーキペダルを踏み込んだ際、荷物やベルトの余りが接触しないか。
- ハンドル干渉確認:ハンドルを左右いっぱいに切った際、フロントフォークやフェンダーが荷物に当たらないか。
- 居住性確認:通常の位置に足を置いた際、荷物が膝やスネに当たって窮屈ではないか。
共締めボルトの扱いや必要な工具をチェック
最後に、DIY作業で「やってしまいがち」な失敗を防ぐための具体的な手順と工具について解説します。まず、車載工具のスパナだけで作業しようとするのはやめましょう。ボルトを舐める原因になります。必ずホームセンター等でしっかりとした「ソケットレンチセット」を用意してください。
そして、最も重要な作業手順が「仮組み(仮止め)」です。
プロも実践する「対角線締め」の法則
- キャリアを車体に当てがい、全てのボルトを手で回る範囲で軽く入れます。この段階では工具を使いません。
- キャリア全体が車体の中心に来るように位置を微調整します。レッグシールドに接触していないかも確認します。
- 全てのボルトが入っていることを確認してから、対角線上(左上→右下→右上→左下など)の順序で、少しずつ均等に工具で締めていきます。
- 最後に、可能であればトルクレンチを使用して規定トルクで本締めを行います。
特にエンジンのクランクケース(アルミ製)側のネジ山は非常にデリケートです。スチール製のボルトを斜めにねじ込んだり、オーバートルク(力の入れすぎ)で締めたりすると、豆腐のように簡単にネジ山が崩れてしまいます。こうなると、修理には高額な費用がかかるか、最悪の場合はエンジンケースごとの交換が必要になります。「垂直に、優しく、均等に」を心がけてください。
クロスカブのセンターキャリアに関するQ&A

最後に、センターキャリアの購入を検討している方からよくいただく質問をまとめました。不安な点はここで解消しておきましょう。
- バイクいじり初心者ですが、自分で取り付けできますか?
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基本的には車体の加工などが不要な「ボルトオン」で取り付け可能なので、初心者の方のカスタム入門としても最適です。ただし、エンジンのケースカバーのボルトを使用するため、締め付け加減(トルク管理)が非常に重要です。100円ショップの工具ではなく、しっかりとしたソケットレンチを用意し、自信がなければバイクショップに依頼するのが一番安心です。
- センターキャリアを付けると、給油の時に邪魔になりませんか?
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キャリア本体はシートの開閉(給油口へのアクセス)に干渉しないよう設計されているため、通常は問題ありません。ただし、キャリアの上に大きなバッグや荷物を固定したままにしていると、シートを跳ね上げる際に荷物がつっかえて全開にできないことがあります。給油の際は、荷物を降ろすか、少し前方にずらすなどの工夫が必要になるケースがあります。
- 旧型(JA45)用のキャリアは、新型(JA60)にも付きますか?
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エンデュランスやキジマなど多くの主要メーカー製品は、JA45とJA60(さらに50ccのAA06)で共通して使える設計になっています。しかし、初期型のJA10などはフレーム形状が異なるため取り付けできません。購入前には必ず、商品ページの「適合車種一覧」でご自身のバイクの型式コードを確認してください。
- 足が当たって窮屈になったりしませんか?
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キャリアのパイプが足の内側にくるため、体格の大きな方だと最初は少し狭く感じるかもしれません。ただ、これは「ニーグリップができるようになる」というメリットの裏返しでもあります。多くのオーナーさんは、乗っているうちに慣れてしまい、むしろ膝で挟める安心感の方が勝ると感じているようです。
自分に合うクロスカブのセンターキャリアおすすめ
今回は、クロスカブの可能性を広げるセンターキャリアについて、深掘りして解説しました。
結論として、あなたの目的によって選ぶべきキャリアは明確に分かれます。
- 水や燃料などの重量物を運び、荒野を目指すならキジマの剛性を。
- スマホを駆使し、都会のジャングルをスマートに駆け抜けるならエンデュランスの機能性を。
- 愛車の美しさを保ちつつ、大人の余裕を演出するならSP武川の質感を。
- 雨ニモマケズ、風ニモマケズ、毎日走り続けるならアウトスタンディング(ステンレス)の耐久性を。
センターキャリアは、単なる「荷物置き場」ではありません。それは、あなたのクロスカブを「自分だけの相棒」へと進化させるための重要なピースです。ニーグリップによる走りの変化や、自分好みのコックピットを作り上げる喜びは、実際に取り付けたオーナーだけが味わえる特権です。
この記事が、あなたのクロスカブライフをより豊かにする手助けになれば幸いです。さあ、次はどのパーツで愛車をアップグレードしましょうか?
(出典:本田技研工業株式会社『クロスカブ50 / 110』)
※本記事の情報は執筆時点のものです。パーツの適合や価格は変更になる可能性があります。取り付け作業は自己責任で行い、不安な場合はプロのショップに依頼することを強くおすすめします。
