こんにちは。デジタルバイクライブラリー、運営者の「ゆう」です。
X-ADVの唯一無二のクロスオーバースタイル、本当にかっこいいですよね。
スクーターの利便性とアドベンチャーバイクの走破性を兼ね備えた、まさに「いいとこ取り」のマシンに惹かれている方も多いのではないでしょうか。
しかし、購入を検討する段階でどうしても立ちはだかるのが、X-ADV最大の懸念点である「足つき性」です。
カタログスペック以上に実際の足つきは厳しいという評判も多く、身長160cm台のライダーや女性の方は特に「自分に乗れるだろうか」と大きな不安を感じているかもしれません。
実は、平均的な身長と言われる170cmの方でも踵が浮くことが珍しくないのが、このバイクの正直な特徴なんです。でも、そこで諦めるのはまだ早いです。
ライバル車であるTMAX560との比較やサスペンションの調整、そして各メーカーから出ている評判の良いローダウンキットをうまく活用することで、快適に乗れるように改善できる余地は十分にあります。
この記事では、X-ADVの足つきに関する悩みを根本から解消し、安心してオーナーになるための具体的な方法を徹底的にご紹介します。
- 身長別のリアルな足つき状況と、先輩ライダーたちが実践している具体的な工夫
- 15mmの微調整から60mmの劇的変化まで選べるローダウンキットの種類と選び方
- 車高を下げた際に発生するサイドスタンドや操安性へのリスクと必要な安全対策
- 自分の体格と用途に合った最適な足つき改善策を見つけ、不安なく走り出すためのヒント
X-ADVの足つきが悪い原因と身長別の実態

X-ADVに憧れて販売店へ行き、実際に跨ってみてその厳しさに言葉を失った…という経験をした方は少なくありません。数値上はそこまで高くないはずなのに、なぜこれほどまでに足つきが悪く感じるのでしょうか。ここでは、カタログの数値と体感のズレを生む構造的な理由と、身長ごとにライダーが直面しているリアルな現実について、徹底的に深掘りしていきます。
シート高790mmの数値と体感のズレ
まず最初に、カタログスペックに記載されている「シート高790mm」という数字について詳しく解説させてください。一般的に、アドベンチャーカテゴリーのバイクにおいて790mmという数値は、極めて低い部類に入ります。
例えば、同社の本格アドベンチャーであるCRF1100L Africa Twinがシート高800mm台後半であることを考慮すれば、数値上は「誰にでも乗れるフレンドリーなバイク」に見えますよね。(出典:本田技研工業『X-ADV 主要諸元』)
しかし、実際に跨ってみると「数字以上に圧倒的に高く感じる」というのが、多くのライダーの共通認識です。この「数値と体感の乖離」には、明確な構造的理由があります。
なぜ数値と感覚がこれほどズレるのか?
最大の原因は、「ステップアーチ幅(Straddle Arc)」と呼ばれる、ライダーが跨ぐ部分の横幅にあります。通常のバイクであれば、ライダーはスリムな燃料タンクとフレームを挟むように脚を下ろすことができますが、スクーター構造を持つX-ADVの場合、エンジン収納部とフロアボードの幅を大きく跨ぐ必要があります。
特にX-ADVは、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)という複雑な変速機構をエンジン横に搭載しているため、クランクケースの幅が通常のMT車よりも広くなっています。さらに、シート直下のフレーム幅もしっかり確保されているため、跨った瞬間にライダーの股関節は強制的に「ガニ股」のように外側に開かれます。
脚を真下にストンと下ろすことができず、ボディーを避けるように外側に大きく迂回させる必要があるため、地面に到達するまでに必要な股下の長さ(有効股下長)が物理的に長くなってしまうのです。
また、フロアボードの後端がちょうど足を下ろしたい位置にあるため、ふくらはぎが当たってしまい(カーフ・インターフェアレンス)、さらに足を外側へ開かざるを得ない状況も重なります。
さらに、通常のバイクのようにタンクを膝で挟む「ニーグリップ」が構造上不可能です。これにより、ライダーは「殿様乗り」と呼ばれる、椅子に座るような直立姿勢を強いられます。太ももの内側で車体をホールドできないため、下半身の安定感を足裏の接地のみに依存することになり、これが足つきの悪さを心理的に増幅させているのです。
結論として、体感的には820mm〜830mmクラスのスポーツバイクと同じくらいの足つき感だと思っておいた方が、実車に触れた時のギャップに苦しまずに済むかもしれません。
身長160cm台のライダーの足つき評判
身長160cm台の方にとって、ノーマルのX-ADVは正直に言って「物理的な限界への挑戦」が必要なバイクです。実際に乗られている160cm〜165cm前後のライダーの声を聞くと、両足接地はほぼ不可能という声が圧倒的です。片足接地であっても、お尻をシートの真ん中から左右どちらかに大きくずらして(オフセットして)、ようやく片方の爪先が地面に届くかどうか、というレベルが現実です。
この「お尻ずらし停車」は、慣れてしまえば無意識にできるテクニックですが、X-ADVの場合は230kgを超える車重があるため、左足一本でその重さを支えることには大きなリスクが伴います。特に、左側に車体を傾けて支えている間は、右足がステップから離れて宙に浮いているか、あるいはブレーキペダルを踏む余裕がない状態になりがちです。坂道発進などでリアブレーキを踏みたい場面では、一瞬の判断遅れが立ちゴケに直結する緊張感があります。
「じゃあ、160cm台では乗れないの?」と思われるかもしれませんが、諦めるのは早いです。工夫次第で乗っている方はたくさんいます。特に参考になるのが、X-ADVに搭載されている高度な電子制御の活用です。
レインモードが意外な助けになる理由
足つきが不安定な爪先立ちの状態で発進する際、最も怖いのはスロットル操作に対する車体の急な反応です。スポーツモードなどで不用意にアクセルを開けると、車体がドンと前に出るピッチングモーションが起き、バランスを崩しやすくなります。
そこで、あえて出力特性が最も穏やかな「レインモード」を晴天時でも常用するというテクニックがあります。出力がマイルドになり、DCTのクラッチ締結も非常に滑らかになるため、爪先立ちの不安定な体勢でも、車体の挙動を乱すことなく安心して発進・停止ができるようになります。
また、X-ADVにはバックギアがありません。足がつかない状態で、またがったまま車体を後ろに下げることは不可能です。そのため、駐車する際は必ず「頭を出口に向けて停める」か、「一度降りて取り回しでバックさせる」という運用ルールを徹底する必要があります。
物理的な足つきはどうしても厳しいですが、こうした運用上の工夫と電子制御の恩恵でカバーしている先輩ライダーの存在は、大きな勇気をくれますね。
身長170cmでも踵が浮く足つきの実態
「身長170cmあれば、国産バイクなら大抵のものは大丈夫だろう」と思われがちですが、X-ADVに関してはその常識は通用しません。平均的な日本人男性の体格である170cm前後であっても、ノーマル状態で両足を着こうとすると「踵が数センチ浮く」状態がデフォルトだと思ってください。
もちろん、片足であれば膝に余裕を持ってベタ付きまで持っていけることも多いですし、走行中のコントロールには全く支障ありません。しかし、信号待ちなどで油断して両足をダラっと下ろそうとすると、踵が地面に届かずスカッとなり、ヒヤッとする場面があるかもしれません。
ここで問題になるのが、X-ADVの「静的安定性」と「動的安定性」のギャップです。X-ADVはNC750系のエンジンレイアウトを踏襲しており、シリンダーが前傾しているため重心が非常に低く設計されています。そのため、一度走り出してしまえば、時速10km以下の極低速走行やUターンでも驚くほど安定しており、ふらつきを感じることはほとんどありません。
しかし、停止時(静的状態)になると話は別です。重心が低いとはいえ、236kg〜237kgという750ccクラスとしては重量級の車体を、浮いた踵や爪先だけで支えるのは、物理的なモーメントとしてライダーにのしかかります。
特に、路面が轍(わだち)で波打っている交差点や、強風で車体が煽られるようなシチュエーションでは、この「踵が着かない数センチ」が巨大な心理的プレッシャーとなります。「走り出せば天国、止まれば緊張」というこの二面性が、X-ADVというバイクの面白さであり、同時に多くのライダーを悩ませる難しさでもあるのです。
女性ライダーが感じる足つきの悩み
女性ライダーの場合、男性に比べて骨盤の形状の違いや筋力の差があるため、同じ身長でも足つきに対する不安感はより大きくなりがちです。特にX-ADVのような重量車の場合、単に「足が届くか」だけでなく、「届いた足で230kgを支えきれるか」という筋力の問題が切実に関わってきます。
また、体重が軽い女性ライダー特有の悩みとして、「サスペンションが沈まない(1G’沈下量が少ない)」という現象があります。サスペンションはライダーが跨った重みである程度沈み込むように設計されていますが、体重が軽いとこの沈み込み量が少なくなり、結果として乗車時のシート高が高止まりしてしまうのです。
最近では、こうした課題に対して、既製品のローダウンキットをポン付けするだけでなく、サスペンション専門店に相談して自分専用のセッティングを出してもらう方も増えています。
LTD(ローダウン)加工というプロの選択肢
例えば「セイクレッドグランド」さんのようなサスペンション専門店では、ライダーの体重や乗り方に合わせてサスペンション内部のパーツを加工・変更する「LTD(ローダウン)」メニューを提供していることがあります。
費用はかかりますが、単にバネを短くするだけでなく、ダンパーの効き具合も含めてトータルで調整してくれるため、乗り心地を犠牲にせず、かつ体重の軽い女性でもしっかりと足をつけるようにする、非常に有効な解決策の一つです。
また、物理的な改造に抵抗がある場合は、2cm〜3cm底上げされた「厚底ライディングブーツ」を導入するのも非常に効果的です。バイク側をいじらずに自身のリーチを伸ばすことができるため、まずはここから始めてみるのも賢い選択と言えるでしょう。
ライバル車TMAX560との足つき比較
X-ADVの購入を検討する際、必ずと言っていいほど比較対象になるのが、キング・オブ・スクーターことヤマハのTMAX560ですよね。どちらもスポーツ性能が高いコミューターですが、実は足つきに関しては、TMAX560も決して良くはありません。
市場データを見ても、166cm〜170cmのライダーの約半数がTMAX560においても「つま先立ち」であると回答しています。これはX-ADV固有の問題というよりは、大排気量エンジンを搭載し、メットインスペースを確保しなければならない「マキシスクーター」というジャンル全体が抱える構造的宿命です。幅広なシートとセンタートンネルがある限り、どうしても足つきは悪化してしまいます。
ただ、X-ADVがTMAX560と決定的に違うのは、サスペンションのストローク量(動く幅)が長いことです。X-ADVはオフロード走行も視野に入れたアドベンチャーモデルであるため、最低地上高が高く、サスペンションが上下に大きく動くように設計されています。
これにより、跨った時の沈み込みも大きい反面、ブレーキング時や加速時、あるいは路面の凹凸によって車体が上下に揺すられる幅(ピッチング)も大きくなります。
TMAXがオンロードスポーツとしてカチッとした足回りであるのに対し、X-ADVは良くも悪くも「フワッ」とした動きをします。この停止直前の「揺らぎ」が、足つきに不安のあるライダーにとっては「おっとっと!」となる瞬間を生みやすく、TMAX以上に立ちゴケの不安を感じさせる要因になっている側面はあるかなと思います。
X-ADVの足つき改善策とローダウンの注意点

構造的に足つきが厳しいことは分かりましたが、だからといってX-ADVに乗ることを諦める必要はありません。幸いなことに、世界中のライダーが同じ悩みを抱えているため、アフターマーケットには非常に優秀なローダウンパーツが揃っています。
ここからは、具体的な解決策と、それを導入する際に絶対に知っておいてほしいリスク管理について解説します。
足つき改善に効果的なローダウンキット
X-ADVの足つきを物理的に改善する最もポピュラーかつ確実な方法は、リアサスペンションのリンクプレート(ロッド)を交換する「ローダウンキット」の導入です。現在、市場には国内外のいくつかの主要ブランドがあり、それぞれ「どれくらい下がるか」「何を重視して設計されているか」が異なります。
| メーカー | ダウン量(目安) | 素材・仕様 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|---|
| デイトナ (Daytona) | 約15mm〜20mm | スチール製 カチオン黒塗装 | 【バランス重視】 純正のハンドリング性能を崩したくない。 170cm前後で「あと少し」が欲しい人。 |
| エフェックス (EFFEX) | 約20mm | スチール/ アルミ | 【スタンダード】 ショートサイドスタンドとセットで揃えたい。 日本の定番ブランドで安心したい人。 |
| パイツマイヤー (Peitzmeier) | 20mm / 40mm / 60mm | ステンレス/ スチール | 【足つき最優先】 身長160cm以下で、とにかく物理的に下げないと乗れない人。 欧州基準の安全性が欲しい人。 |
| ディモーティブ (Dimotiv) | 20mm / 45mm | G3131熱延鋼板 | 【選択肢重視】 45mmという中間設定が欲しい人。 高強度な鋼材にこだわる人。 |
このように、一口にローダウンと言っても選択肢は様々です。「少し安心感が欲しい」のか、「劇的に変えたい」のかによって選ぶべきパーツが変わってきます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
デイトナ製リンクで足つきを確保する
まず、多くのX-ADVオーナーが最初に検討し、そして実際に選んでいるのが、国内の最大手パーツメーカーであるデイトナ製の「リアローダウンリンクロッド」です。検索ボリュームを見ても、この製品への関心の高さがうかがえます。
このキットの最大の特徴であり、設計思想の根幹にあるのが「バイク本来の走りの性能(操安性)を極力損なわない」という点です。ダウン量は「約15mm〜20mm」と、他社製品に比べて控えめな数値になっています。
正直なところ、「せっかくお金をかけて変えるなら、もっとガッツリ下げたい」と思うのが人情ですよね。しかし、この数値にはデイトナのエンジニアによる深い意図があります。
オートバイのサスペンションは、リンクの長さが変わると「レバー比」が変化し、サスペンションの動きやタイヤのグリップ感に大きな影響を与えます。過度に下げすぎると、直進安定性は増すものの、コーナリングでバイクが寝にくくなったり、曲がっている最中の安定感が失われたりします。デイトナは実走テストを繰り返し、「X-ADV特有の軽快なハンドリングを維持できるギリギリの限界点」として、あえてこの数値を設定しているのです。
「たった15mm?」と侮るなかれ。サスペンションリンク部分での15mmダウンは、実際にライダーが跨って体重をかけた際の沈み込みを含めると、数値以上の安心感をもたらします。特に身長170cm前後で「あと少しで踵が着きそうなのに、その数センチが遠い!」と感じているライダーにとっては、走りの楽しさと足つきの安心感を両立できる、まさに「最適解」と言えるでしょう。
品番選びに注意が必要です!
デイトナのローダウンロッド(品番:99328など)は、コストダウンのために400XやCBR400R、NC750Xといった他車種と部品を共有している場合があります。しかし、車種ごとにリンクのレバー比が異なるため、同じ部品を使っても「400Xでは25mm下がるけど、X-ADVでは15mmしか下がらない」といった現象が起きます。
ネット上のレビューを見る際は、その情報が「X-ADV(特にご自身の年式)」のものなのかを必ず確認するようにしてください。
パイツマイヤー製で最大60mm下げる
一方で、「ハンドリング云々よりも、とにかく足が着かないと怖くて公道に出られない!」という切実な悩みを持つ、身長160cm前後の方や小柄な女性ライダーには、ドイツのパイツマイヤー(Peitzmeier)製キットが唯一無二の救世主となります。
このメーカーの特筆すべき点は、ラインナップに「60mmダウン」という極端な仕様が存在することです。シート高が790mmから単純計算で730mm付近まで下がるわけですから、感覚としてはアドベンチャーバイクからアメリカンクルーザーに乗り換えるくらいの劇的な変化があります。これにより、これまで「絶対に無理」と諦めていた方でも、両足の爪先、あるいは片足のベタ付きが可能になる可能性が高まります。
「そんなに下げて、強度は大丈夫なの?」と不安になるのが当然です。リンクプレートは走行中の全荷重と衝撃を受け止める重要保安部品ですから、折れたり曲がったりしたら大事故に繋がります。しかし、パイツマイヤー製品は欧州の非常に厳しい工業製品安全規格である「TUV(テュフ)認証」を取得しています。
TUV(テュフ)認証とは?
ドイツに本拠を置く第三者試験認証機関による規格です。製品の強度、耐久性、安全性が厳格なテストによって証明されたものにのみ与えられます。欧州のアウトバーン(速度無制限道路)を走行する車両にも使用される基準であり、その信頼性は世界トップクラスです。
価格はデイトナ等の国産品に比べて高額になりますが、この「命を預ける部品としての信頼性」と「60mmダウンという圧倒的な機能」にお金を払う価値は十分にあります。
ただし、ここまで下げるとバンク角(車体を傾けられる角度)は大幅に減少します。交差点を曲がる際や、コンビニの入り口の段差などで、フロアボードやセンタースタンドを地面に擦りやすくなるため、運転スタイル自体を「ゆったりクルージング」に切り替える意識改革も必要になります。
ローダウン後のサイドスタンド加工の必要性
ローダウンキットを導入する際に、初心者の方が最も見落としがちで、かつ最も危険なのが「サイドスタンド」の問題です。ここは声を大にして言いたいのですが、「車高を下げたら、サイドスタンドのケアはセットで考える」のが鉄則です。
メカニズムは単純です。車高(ボディの位置)が下がったのに、それを支える脚(サイドスタンド)の長さが変わらなければ、つっかえ棒が長すぎる状態になります。その結果、駐車時に車体がほとんど傾かず、直立に近い状態で停まることになります。
日本の道路は、雨水を排水するために中央が高く、路肩(左側)が低くなっている「カマボコ型」をしています。左側の路肩に停める場合はまだマシですが、逆に右側が低い場所に停めたり、強風が左から吹いたりした場合、車体は簡単に右側へ倒れてしまいます(右側にサイドスタンドはありません!)。大切な愛車が、誰も乗っていない状態で勝手に倒れる悲劇は絶対に避けたいですよね。
ショートサイドスタンドは必須級の投資
20mm以上のローダウンを行う場合は、EFFEXなどが販売している「ショートサイドスタンド」への交換か、鉄工所やバイクショップで純正スタンドを切断・溶接加工してもらうことを強くおすすめします。これはドレスアップではなく、転倒リスクを回避するための「安全コスト」だと割り切って投資してください。
もし、予算の都合などで一時的に純正スタンドのまま運用せざるを得ない場合は、必ず「ハンドルを左いっぱいに切ってロックする(重心を左に移す)」ことと、「意識的に左下がりの傾斜を探して停める」ことを徹底してください。特にトップケースやパニアケースに荷物を満載している時は重心が高くなり、転倒リスクが倍増するので細心の注意が必要です。
サスペンション調整で乗り心地を維持する
リンクプレートを交換して車高を下げることは、単に見た目の高さを変えるだけでなく、サスペンションの「動き方(キネマティクス)」そのものを変化させます。一般的に、ローダウンリンクを入れると、サスペンションに入力される力に対する反力が低下し、サスペンションが「柔らかく」感じられるようになります。
街乗りでは「乗り心地がソフトになった」と好意的に感じることもありますが、大きな段差を乗り越えた際に「ガツン!」と底突き(フルボトム)しやすくなったり、二人乗りや荷物積載時にリアが下がりすぎてしまったりするデメリットも発生します。
これを防ぐためには、リアサスペンションの「プリロード調整」を行う必要があります。X-ADVのリアサスペンションには、バネの硬さ(初期荷重)を調整できる機構がついています。付属の工具を使ってナットを締め込み、バネを少し縮めてあげることで、柔らかくなりすぎたサスペンションにコシを持たせ、底突きを防ぐことができます。デイトナの取扱説明書にも「柔らかく感じる場合はプリロード調整を行ってください」と明記されています。
また、リアだけを下げると車体全体が「尻下がり(ウィリーに近い姿勢)」になり、フロントフォークのキャスター角が寝てしまいます。こうなると、アメリカンバイクのように直進安定性は良くなりますが、ハンドルを切った時の反応が鈍くなり、カーブが曲がりにくく(アンダーステアに)なります。
この「ハンドリングのダルさ」を解消するためには、フロントフォークの突き出し量を調整(フォークをトリプルクランプから上に突き出す)して、車体全体の前後の高さバランスを整える作業が有効です。特に40mm〜60mmの大幅ダウンを行う場合は、この前後バランスの調整(セッティング)を行わないと、まともに走れないバイクになってしまう可能性があります。
ご自身での作業が難しい場合は、必ずプロのショップに相談して、トータルバランスでの調整をお願いしましょう。
ヘッドライトの光軸調整も忘れずに!
尻下がりの姿勢になると、ヘッドライトの照射角度が上を向いてしまいます。そのままでは対向車に眩しい思いをさせたり(パッシングされます!)、自分自身の手元が暗くなったりします。ローダウン後は必ず光軸調整もセットで行ってください。
X-ADVの足つきに関するよくある質問
ここでは、X-ADVの足つき改善を検討している方からよく寄せられる疑問について、一問一答形式でお答えします。
- 厚底ブーツで対応するのはアリですか?
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大いにアリです!最も手軽でリスクの少ない方法です。 バイクの車体構造を一切変えずに足つきを改善できるため、メーカー保証やハンドリングへの影響を気にする必要がありません。「ワイルドウィング」などのメーカーから、つま先部分が2.5cm〜5cm程度底上げされたライディングブーツが販売されています。まずはブーツで対応してみて、それでも厳しければローダウンを検討する、という順序が賢い選択かもしれません。
- シートの「アンコ抜き」は効果ありますか?
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効果は限定的ですが、内腿の圧迫感は減らせます。 X-ADVの純正シートは、スポーツバイクのようにウレタンが分厚いわけではないため、高さを下げるために削れる「シロ」があまり残っていません。無理に削りすぎるとクッション性が失われ、長距離ツーリングでお尻が痛くなります。高さよりも「角(カド)」を削り落として、脚を真下に下ろしやすくする加工(サイドカット)であれば、足つき感の向上に一定の効果があります。
- ローダウンすると、下取り査定(リセールバリュー)は下がりますか?
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純正パーツを持っていれば問題ありません。 カスタム車両は好みが分かれるため、一般的に査定が下がる傾向にありますが、取り外した純正のリンクプレートやサイドスタンドを保管しておき、売却時に一緒に渡す(あるいは戻す)ことができれば、マイナス査定になることはほとんどありません。外した純正パーツは捨てずに大切に保管しておきましょう。
【総括】X-ADVの足つき問題を解決して楽しむ
ここまで、X-ADVの足つき問題の原因から具体的な解決策まで、長文にお付き合いいただきありがとうございました。
X-ADVの足つき問題は、確かに購入を躊躇させる大きな壁です。しかし、それは「絶対に乗り越えられない壁」ではありません。ご自身の身長や体格、そして「走りを重視するか、安心を重視するか」という優先順位に合わせて、以下のように対策を選んでみてください。
- 170cm前後の方: デイトナ等の15-20mmダウンキットで、X-ADV本来のスポーティな走りを犠牲にせず、信号待ちでの安心感をプラスする。
- 160cm台の方: パイツマイヤー等の大幅ダウンキットや厚底ブーツを駆使して、まずは「恐怖感なく乗れる状態」を作ることを最優先にする。
- 全ライダー共通: ショートサイドスタンドへの交換やプリロード調整を行い、立ちゴケリスクや乗り心地の悪化といった「副作用」をしっかり抑え込む。
足つきの不安さえ解消できれば、X-ADVは毎日の通勤を快適な冒険に変え、休日のツーリングでは道を選ばずどこへでも連れて行ってくれる、最高の相棒になります。「足がつかないから」という理由だけでこの素晴らしいバイクを諦めてしまうのは、あまりにも勿体無いです。
ぜひ、あなたに合った最適な改善策を見つけて、安全で快適なX-ADVライフをスタートさせてくださいね。応援しています!
