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【X-ADV】フルパニア化の総額と車幅問題を徹底比較【純正vs社外】

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【X-ADV】フルパニア化の総額と車幅問題を徹底比較【純正vs社外】

こんにちは。デジタルバイクライブラリー、運営者の「ゆう」です。

アドベンチャーバイクのタフな走破性と、コミュータースクーターの快適性を高次元で融合させた唯一無二の存在、それがHonda X-ADVです。

私自身、このバイクの近未来的なデザインとDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)によるダイレクトな走りに魅了されている一人ですが、オーナーとして正直に告白しなければならない悩みがあります。

それは、「アドベンチャーを名乗る割には、荷物が載らない」という現実です。

シート下のラゲッジスペースは約22リットル。これは一見十分に見えますが、アドベンチャータイプのフルフェイスヘルメットを入れると蓋が閉まらないことも多く、キャンプツーリングや数泊の長旅に出ようとすると、途端に積載能力不足が露呈します。

そこで誰もが一度は検討するのが、トップケースとサイドケースを組み合わせた「フルパニア化」ではないでしょうか。

しかし、いざフルパニア計画を立て始めると、様々な壁にぶつかります。

「純正オプションで見積もりを取ったら30万円を超えて驚愕した」「GIVIやSHADを付けたいけど、マフラーに干渉するらしい」「車幅が広がりすぎて、都内のすり抜けができなくなるのでは?」といった、コストと実用性のジレンマです。

この記事では、X-ADVオーナーが直面するこれらの疑問に対し、現行型(RH10)と初期型(RC95)の違いも踏まえながら、徹底的に解説していきます。

この記事でわかること
  • 純正、GIVI、SHADそれぞれの特徴とメリット・デメリット
  • すり抜けは可能かどうかの車幅シミュレーション
  • フルパニア化にかかる現実的な総額の違い
  • 前期型RC95と現行型RH10の適合の落とし穴
目次

X-ADVをフルパニアにする前に知るべき基礎知識

X-ADVをフルパニアにする前に知るべき基礎知識

X-ADVをフルパニア化すると、ロングツーリングでの快適性は劇的に向上します。雨具、防寒着、キャンプ道具、そして旅先で衝動買いしたお土産まで、全てを飲み込む巨大なトランクを手に入れることができるからです。

しかし、単に「箱を付ける」といっても、選ぶメーカーによって設計思想や使い勝手、そして愛車のシルエットは大きく変わります。まずは、主要な3つの選択肢(純正、GIVI、SHAD)が持つ特徴と、意外と見落としがちな物理的な制約について整理しておきましょう。

X-ADV純正パニアの価格とワンキーシステムの魅力

まず最初に検討するのがHonda純正のパニアケースだと思います。カタログやディーラーの展示車で見かける純正フルパニア仕様は、車両のデザイナーが開発段階から関わっているだけあって、車体との一体感が別格です。

純正システムを選ぶ最大のメリットは、なんといっても「Honda ワン・キー・システム」の採用にあります。通常、社外品のパニアケースを付けると、「バイクのエンジンキー」とは別に「トップケースの鍵」「サイドケース(右)の鍵」「サイドケース(左)の鍵」といった具合に、鍵束がジャラジャラと増えてしまいがちです。雨の降るパーキングエリアで、濡れた手で「どの鍵だっけ?」と探すストレスは、経験した人にしか分からない煩わしさがあります。

しかし純正システムであれば、車両のスマートキー(に内蔵されたメカニカルキー)一本で、全てのケースの施錠・解錠、そしてベースからの着脱が可能になります。このシームレスな使い勝手は、一度体験すると他のシステムには戻れないほどの快適さを提供してくれます。

また、ハードウェアとしての完成度も非常に高いです。特に2021年以降の現行型(RH10)用に設計された純正サイドパニアは、右側のケース裏面がマフラーの跳ね上げ形状に合わせて複雑に「えぐり加工」されています。これにより、ケースを極限まで車体中心に寄せることができ、マスの集中化(重心を中心以外に集めること)による運動性能への影響を最小限に抑えています。デザインも、X-ADVのアグレッシブなボディラインを崩さないよう、エッジの効いた形状が採用されています。

導入コストの高さは覚悟が必要

ただし、この完璧なシステムを手に入れるためのコストは非常に高額です。サイドケース本体(左右)、それを取り付けるためのパニアサポートステー、リアキャリア、トップケース、そして人数分のワン・キー・インナーロックシリンダーなどを全て新品で揃えると、総額で30万円〜37万円前後になることもあります。これは125ccのスクーターがもう一台買えてしまう金額であり、導入には相当な覚悟が必要です。

X-ADVにGIVI製ケースを付ける際の注意点

世界中のツアラーから絶大な支持を集めるイタリアの老舗ブランド、GIVI(ジビ)

頑丈な造りと豊富なラインナップが魅力ですが、実はX-ADVに関しては、適合確認に非常に注意が必要な車種の一つです。

最大の問題点は、X-ADVの特徴でもある「急角度でカチ上げられたアップタイプマフラー」の存在です。GIVIの汎用サイドケースの多くは、一般的なオンロードバイクの低いマフラー位置を想定しているか、あるいはアドベンチャーバイクのようにマフラーを避けるための専用フレームを組むことを前提としています。

特に初期型(RC95)向けに販売されている専用サイドケースホルダー「PL1158」は、GIVIの全てのケースが装着できるわけではありません。メーカーの適合情報を詳細に確認すると分かりますが、流線型で人気の高い「V35」や「V37」シリーズ、そして本格的なアルミケースである「Trekker Outback」シリーズ(Cam-Sideシステム)は、マフラーとの干渉により装着不可となっているケースが非常に多いのです。

さらに、近年キャンプツーリングで人気が高まっている「防水ソフトサイドバッグ(GRT709など)」の装着にもリスクが伴います。ハードケースと異なり、ソフトバッグは風圧や荷物の重みで多少変形したり垂れ下がったりします。X-ADVの場合、右側のバッグ底面が高温のサイレンサーに接触しやすく、最悪の場合、バッグが溶けて穴が開いたり、火災の原因になったりする危険性があります。

GIVIを選択する場合は、単に「X-ADV対応ステー」を買うだけでなく、「そのステーにどのケースなら物理的に付くのか」まで入念にシミュレーションする必要があります。

X-ADVとSHADの3Pシステムは相性抜群か

純正の価格は高すぎる、でもGIVIは適合がややこしい…。そんなX-ADVオーナーの間で、近年急速に評価を高めているのがスペインのブランドSHAD(シャッド)です。個人的に、デザインと実用性のバランスにおいて、X-ADVと最も相性が良いサードパーティ製品だと感じています。

SHADが選ばれる最大の理由は、「3Pシステム」という革新的な固定方法にあります。従来のサイドパニアステー(GIVIのPLシリーズなど)は、長方形の太い鉄パイプを車体両サイドに常設する構造が一般的でした。

これは頑丈ですが、ケースを外して街乗りをする際には、まるで「工事現場の足場」をぶら下げているような無骨な見た目になってしまい、X-ADVの洗練されたスタイリングを大きく損ねてしまいます。

対してSHADの3Pシステムは、車体のテールラインに沿った「L字型の細いアーム」のみで構成されています。固定ポイントを3点に絞ることでステー自体の存在感を消しており、ケースを外した状態でも「後付け感」がほとんどありません。X-ADVのように、平日なシティコミューター、休日はツアラーとして使い分ける車両にとっては、この「外した時のカッコよさ」は非常に重要なポイントです。

走行性能への影響も最小限

3Pシステムは軽量であることに加え、ケースの重心位置を可能な限り車体中心・かつ低い位置にセットできるよう設計されています。荷物を満載した際のハンドリングの変化が穏やかで、ワインディングなどでもX-ADVのスポーティな走りを楽しみたい方には、非常に理にかなった選択肢と言えるでしょう。

フルパニア時の車幅ですり抜けは可能か検証

日本の道路環境、特に都市部でX-ADVを運用するライダーにとって、避けて通れない切実な問題が「車幅(全幅)」です。X-ADVはノーマルの状態でもハンドル幅が910mm〜940mm(年式やナックルガードの有無による)と広く、大型バイク並みのサイズ感があります。ここにサイドパニアを追加すると、車体後部の幅はどうなってしまうのでしょうか。

最も注意が必要なのは、フルフェイスヘルメットを収納できることを売りにした大容量ケース(例:SHAD SH36など)を選んだ場合です。これらは収納力を確保するために横への張り出しが大きく、装着時の全幅が116cm近くに達することもあります。

ケースモデル片側張り出し幅 (目安)全幅推計すり抜け・取り回し判定
SHAD TR40
(アドベンチャー用ソフト)
約41cm約82cm優秀:ハンドル幅内に収まるため、
前が通れば後ろも通る安心感がある。
SHAD SH23
(トップオープン型)
約49cm約98cm注意:ハンドル幅よりわずかに広い。
ミラーを避けてもパニアが当たる可能性あり。
SHAD SH36
(フルフェイス対応)
約58cm約116cm危険:すり抜けはほぼ不可能。
軽自動車の全幅の約8割に相当。

「116cm」という数字は、ホンダの最大級ツアラーであるゴールドウイングの全幅に近い数値です。渋滞路ですり抜けを試みた際、ライダーの視界にあるハンドルバーが無事に通過できたとしても、死角にある後方のパニアケースがガードレールや隣の車のドアミラー、あるいはバンパーに接触する「内輪差・外輪差」のリスクが極めて高くなります。

「フルパニアの時は絶対にすり抜けをせず、車と同じようにおとなしく走る」と割り切れるなら問題ありませんが、日常の機動力を維持したいのであれば、容量を犠牲にしてでも薄型のケース(SHADならSH23やTR30など)を選ぶか、あるいはサイドケースを諦めて大容量のシートバッグを併用する等の判断が求められます。

パニアステーやキャリアの取り付け構造の違い

パニアケースを導入する際、カタログの「ケース本体」ばかりを見てしまいがちですが、実はそれを取り付けるための「ステー(フィッティングキット)」や「リアキャリア」の構造こそが、取り付けの難易度や総額を左右します。

Honda純正の場合、X-ADVの車体設計時にあらかじめ設けられたマウントポイントを利用するため、リアカウルの一部に穴あけ加工などは必要ですが、基本的にはボルトオンでスマートに装着可能です。強度計算もしっかりなされているため、サブフレームへの負担も考慮されています。

一方、社外品(GIVIやSHADなど)の場合は注意が必要です。多くの社外サイドステーは、単独で車体に固定することが難しく、「トップケース用のリアキャリア(または専用のフィッティングキット)」と共締めすることで強度を確保する構造になっていることが多いのです。

「トップケースはいらない」は通用しない?

例えば、「トップケースは付けずに、サイドパニアだけをスタイリッシュに付けたい」と考えてGIVIのサイドステーを購入しようとしたとします。しかし、説明書をよく読むと「装着には別売りのトップケース用ステー(○○FZ)が必要です」と書かれていることがあります。つまり、サイドケースを付けるためだけに、使わないトップケース用の土台まで購入しなければならないケースがあるのです。

また、初期型(RC95)と現行型(RH10)では、リアグリップ周辺のボルト位置や形状が完全に異なります。社外品を購入する際は、単に「X-ADV用」という表記だけで判断せず、メーカー公式サイトのPDF説明書などをダウンロードし、自分の年式の車体構造と合致しているか、どのパーツとどのパーツを組み合わせる必要があるのかを、プラモデルの設計図を見るような気持ちで事前に確認しておくことを強くおすすめします。

X-ADVのフルパニア化にかかる総額と賢い導入法

X-ADVのフルパニア化にかかる総額と賢い導入法

さて、ここからは皆様が最も気になっているであろう「お金」の話です。X-ADVのフルパニア化は、決して安い買い物ではありません。新品で揃える場合のリアルなコスト感と、できるだけ出費を抑えるための「賢い買い方」、そして絶対にやってはいけない失敗例について解説します。

フルパニア化の総額は純正と社外でどう違う

新品のパーツを購入してゼロからフルパニアシステムを構築した場合、総額はどの程度になるのでしょうか。工賃を含まない、純粋なパーツ代のみの概算で比較してみましょう。

スクロールできます
項目Honda純正 (RH10用)SHAD / GIVI (目安)
サイドケース本体 (左右)約163,000円 〜 181,500円約50,000円 〜 100,000円
パニアサポートステー約26,000円 〜 30,000円約20,000円 〜 30,000円
トップケース本体約60,000円 〜 100,000円約20,000円 〜 60,000円
リアキャリア/ベース約40,000円 〜 50,000円約15,000円 〜 25,000円
その他 (キーシリンダー等)約10,000円– (ケースに付属)
合計概算約300,000円 〜 370,000円約150,000円 〜 220,000円

ご覧の通り、純正で全てを揃えると、場合によっては40万円近くに達することもあります。これは車両本体価格の約20%〜30%に相当する金額です。対して、SHADやGIVIなどの社外品で揃えれば、半額近い15万円〜20万円程度に抑えることが可能です。

しかし、ここで考慮すべきなのが「リセールバリュー(売却時の価値)」です。将来X-ADVを手放す際、純正のフルパニアキットはプラス査定の対象となりやすく、特に車両と一緒に売却する場合は高く評価されます。一方、社外品のパーツは査定での評価が低かったり、場合によっては「取り外してノーマルに戻してください」と言われたりすることもあります。「初期投資は高いが資産価値が残る純正」か、「初期投資を抑えて使い潰す社外品」か、ご自身のバイクライフプランに合わせて選択することが重要です。

(出典:Honda公式サイト『X-ADV 純正アクセサリー・カスタマイズパーツカタログ』

フルパニア済みの中古車がお買い得な理由

もし、あなたが「これからX-ADVを買おうとしている」段階であれば、声を大にしてお伝えしたい最強の節約術があります。それは、「最初からフルパニア装備が付いている中古車を探す」ことです。

中古車市場の価格形成には不思議な力学があります。前述の通り、新品で買えば30万円以上する純正フルパニアセットですが、中古車として販売される際、その価値が車両価格にそのまま30万円上乗せされることはまずありません。市場データを分析すると、フルパニア車とノーマル車の価格差は、せいぜい数万円〜10万円程度に収まっていることが多いのです。

時には、年式や走行距離の条件が近ければ、ノーマル車とほぼ同じ価格でフルパニア車が売られていることも珍しくありません。これは、販売店側が「総額を高くしすぎると売れにくくなる」と判断し、オプション分の価格を圧縮してプライシングするためです。

検索のコツ

GooBikeなどの検索サイトを利用する際は、フリーワード検索で「フルパニア」「パニアケース」「3点」といったキーワードを入力して絞り込んでください。前のオーナーさんが数十万円を負担して装着してくれた最高級の装備を、実質タダ同然で受け継ぐことができる。これこそが中古車選びの醍醐味であり、最も賢いX-ADVの買い方と言えるでしょう。

社外マフラー交換車はパニア装着不可の罠

X-ADVをカスタムして楽しみたい方、あるいは中古車でカスタム済み車両を検討している方が最も陥りやすいトラブル、それが「マフラーとパニアケースの干渉問題」です。

X-ADVの純正マフラーは、パニアケースの装着を前提に、角度や張り出しが緻密に計算されています。しかし、ヨシムラ、アクラポビッチ、モリワキといった人気の社外マフラーの多くは、排気効率の向上や迫力あるサウンド、そしてスポーティな見た目を追求するため、サイレンサーが純正よりも大型化していたり、角度がより上向き(カチ上げ)になっていたりします。

この「数センチの違い」が致命的です。社外マフラーを装着した状態でサイドパニア(特に右側)を取り付けようとすると、ケースの底面がサイレンサーにガッツリと当たってしまい、ステーに固定できないという事態が多発しています。無理に付けようとすれば、走行中の振動で互いが削れたり、排熱でケースが溶けたりする大惨事になります。

解決策は2つだけ

フルパニア化を絶対条件とするならば、選択肢は以下の2つに限られます。 マフラーは純正を維持する。(これが最も確実でトラブルがありません) メーカーが明確に「純正パニアケース対応」と表記しているマフラーを選ぶ。ただし、選択肢は非常に限られます。

RC95とRH10の型式による適合の違い

最後に、最も初歩的かつ致命的なミスを防ぐための注意点をお伝えします。X-ADVは2021年に大規模なモデルチェンジを行い、型式が「2BL-RC95(初期型)」から「8BL-RH10(現行型)」へと変更されました。

両者はパッと見のデザインこそ似ていますが、中身は別物です。フレーム形状の刷新、シートレールの構造変更、そしてボディカウルのデザイン変更が行われており、パニアケース、リアキャリア、パニアステーの互換性は基本的にありません。

特に危険なのが、ヤフオク!やメルカリなどの個人売買です。「X-ADV用 パニアステー」というタイトルだけで出品されている商品を、「たぶん付くだろう」という安易な気持ちで落札してしまうと、取り付け位置が全く合わずに途方に暮れることになります。特に、初期型(RC95)用のパーツは市場に多く出回っており、安価であるため注意が必要です。

ご自身の車検証を確認し、型式が「RC95」なのか「RH10」なのかを明確にした上で、購入しようとしているパーツがその型式専用のものであるかを、品番レベルで照合する癖をつけましょう。ここを横着しないことが、無駄な出費を防ぐ唯一の手段です。

【総括】X-ADVのフルパニアで快適な旅を実現しよう

ここまで、X-ADVのフルパニア化に関するメリットだけでなく、コストや車幅、適合といった厳しい現実についても包み隠さず解説してきました。「意外と大変そうだな…」と思われたかもしれません。しかし、それらのハードルを乗り越えてフルパニア化を達成した時、X-ADVは最強の旅バイクへと進化します。

ヘルメットを持って歩く煩わしさから解放され、急な雨でも荷物を濡らす心配がなく、キャンプ場についても余裕を持って設営ができる。スクーターの快適性とアドベンチャーの積載力が融合したその姿は、まさに「クロスオーバー」の真骨頂です。

予算に余裕があり、スマートな運用と資産価値を重視するなら「Honda純正」。コストを抑えつつ、スタイリッシュなデザインでまとめたいなら「SHAD」。

そして何よりお得に乗り出したいなら「装備済み中古車」。ご自身の予算とバイクライフのスタイルに合った最適な方法を選んで、X-ADVと共に日本の隅々まで走り抜けてください。この記事が、あなたの旅の準備の一助となれば幸いです。

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