こんにちは。デジタルバイクライブラリー、運営者の「ゆう」です。
アドベンチャーバイクのタフなルックスに、スクーターの快適性を融合させたHondaのX-ADV。
「こんなバイク、今までなかった!」と衝撃を受けて以来、その独自のスタイルに惹かれている方は多いはずです。
私自身、街乗りからキャンプツーリングまでこなせるこの万能さに魅力を感じていますが、購入を検討する段階になると、どうしても気になってくるのが「動力性能」の部分ではないでしょうか。
特に、大型バイクからの乗り換えや、リッタークラスの仲間とツーリングに行く機会が多い方にとって、「750ccのスクーターベースで本当に高速道路は辛くないのか?」「追い越し加速で置いていかれないか?」といった点は、決して無視できない不安要素ですよね。
見た目がどんなに良くても、走りが物足りなければ愛車として長く付き合うのは難しいものです。
今回は、そんなX-ADVの「最高速」や「加速性能」という、少し踏み込んだテーマについて徹底的に深掘りしていきます。
カタログに載っているスペックの数値だけでは見えてこない、実際にアクセルを開けた時のフィーリングや、ライバル車との決定的な違い、さらには高速走行時の安定性に関するリアルな事情まで、包み隠さずお伝えしたいと思います。
「X-ADVって、実際どうなの?」という疑問を、この記事でスッキリ解消していってくださいね。
- X-ADVのGPS実測による最高速度と0-100km/h加速タイム
- 絶対王者TMAX560と比較した時の加速特性の違い
- 2021年のモデルチェンジで激変したエンジンの伸びと限界性能
- 高速走行時に発生しやすい「ウォブル現象」の正体と対策
X-ADVの最高速と加速の実測データ

まずは、皆さんが一番知りたいであろう「数字」の部分から見ていきましょう。「スクーターの形をしているから、どうせモッサリしているんでしょ?」なんて思っていたら、大間違いです。
X-ADVの中身は、HondaがNC750シリーズで培った技術を結集した、正真正銘のモーターサイクルそのものです。その実力が数字としてどう表れているのか、具体的なデータをもとに解説します。
0-100km/h加速のタイム結果
信号待ちからのスタートダッシュや、高速道路の合流車線で重要になるのが、停止状態から時速100kmに達するまでの時間、いわゆる「0-100km/h加速」です。海外の多くのメディアや個人のテストデータを集約すると、X-ADVの0-100km/h加速タイムは、平均して約4.9秒~5.5秒という数値が出ています。
この「5秒前後」というタイムがどれくらい速いのか、少しイメージしにくいかもしれませんね。四輪車で例えるなら、最新のスポーツカーや、3リッタークラスのセダンと同等か、それ以上の瞬発力です。二輪車で言えば、一般的な250ccクラスのスポーツバイクが7秒~8秒かかるのに対し、X-ADVはそれをバックミラーの点にするほどの加速力を持っています。600ccクラスのミドルスポーツバイクにも食らいついていけるレベルと言えば、その凄さが伝わるでしょうか。
なぜ重量級なのにこんなに速い?
X-ADVの車重は236kgと決して軽くはありません。それなのに速い理由は、エンジンの「極太トルク」と「DCT」の組み合わせにあります。低回転から爆発的なトルクを生み出すロングストロークエンジンを、人間よりも遥かに素早く変速するDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が繋いでいくため、駆動力の途切れ(ロス)が全くないんです。
実際にシグナルダッシュを試みると、アクセルを全開にした瞬間、リアタイヤが路面を噛む感触と共に、巨体が「ドンッ!」と弾かれたように前に飛び出します。CVTスクーターのような「エンジン音が先に上がって、後から速度がついてくる」感覚とは無縁の、ダイレクトで暴力的な加速感。これこそがX-ADVの真骨頂であり、多くのライダーを虜にする理由の一つなんです。
TMAXと動力性能を徹底比較
大型スクーター界の絶対王者として君臨するYamahaのTMAX 560。
X-ADVを購入候補に入れている方の多くが、このTMAXと比較検討されているのではないでしょうか。どちらも「スポーツできるスクーター」ですが、その加速のキャラクターや得意とするステージは、まるで水と油のように異なります。
| 比較項目 | Honda X-ADV (745cc) | Yamaha TMAX 560 (562cc) |
|---|---|---|
| トランスミッション | DCT (有段ギア変速) | CVT (無段変速ベルト) |
| 加速フィーリング | ガツンと蹴り出すダイレクト感 | 滑らかに速度が乗るシルキー感 |
| 0-100km/h加速 | 約4.9秒(先行) | 約5.3秒 |
| エンジン特性 | 低中回転トルク重視 | 高回転の伸び重視 |
| 車体設計思想 | アドベンチャー・直進安定 | ロードスポーツ・旋回性能 |
まず、単純な「ヨーイドン」のゼロ発進加速においては、排気量で約200cc勝り、かつDCTで動力を直結させるX-ADVの方に分があります。X-ADVがギアを切り替えながら「グン、グン、グン」と段付きで加速していくのに対し、TMAXは一定の回転数を保ったまま「シューン」と息継ぎなしで加速していくのが特徴です。
しかし、これがワインディング(峠道)になると話が変わります。TMAXはエンジンを車体中央に低くマウントし、前後重量配分をスポーツバイク並みの50:50に近づけているため、コーナリングの軽快さは圧倒的です。対してX-ADVは、重心が高めでフロントヘビーな傾向があり、コーナーでは「ヨイショ」と寝かし込む感覚が必要です。
結論として、「直線番長的な加速のパンチ力」や「未舗装路も走れる走破性」を求めるならX-ADV、「峠道でのヒラヒラとした操縦性」や「洗練された大人の走り」を求めるならTMAX、という選び分けができるかなと思います。どちらが良い悪いではなく、目指している頂上が違うんですよね。
年式別の馬力とスペックの違い
X-ADVは2017年のデビュー以降、熟成を重ねていますが、特に2021年のフルモデルチェンジ(RH10型)は、エンジン性能において大きな転換点となりました。これから中古車を探す方や、スペックの違いが気になる方のために、何が変わったのかを詳しく解説します。
2021年モデル以降、エンジン内部には徹底的な改良が施されました。ピストンの裏側を肉抜きして軽量化したり、クランクシャフトのバランサー重量を最適化したりすることで、エンジンの最高出力は約4馬力アップの57.8馬力(43.1kW)に到達しています。
そして、馬力アップ以上にライダーが恩恵を感じるのが、レブリミット(エンジンの許容回転数)が600rpm引き上げられ、7,000rpmまで回るようになった点です。「たった600回転?」と思うかもしれませんが、この差は絶大です。
初期型(RC95型)では、加速中に気持ちよく引っ張っている最中に「ガガガッ」とレブリミットに当たってしまい、強制的にシフトアップされる場面がありましたが、新型ではそこからもうひと伸びしてくれます。
この余裕により、各ギアで到達できる速度が伸び、高速道路での合流や追い越し加速がよりスムーズかつパワフルになりました。「高回転域での詰まり感」が解消されたのは、新型エンジンの大きな美点と言えるでしょう。
(出典:本田技研工業株式会社 ニュースリリース『大型クロスオーバーモデル「X-ADV」をフルモデルチェンジし発売』)
GPS実測値とメーター誤差
では、いよいよ核心部分である「最高速度」についてです。公式スペックでは欧州仕様などで168km/hといった数値が見られますが、実際の路上テスト(もちろんクローズドコースやアウトバーン等)ではどのような結果が出ているのでしょうか。
複数の海外テスト動画やGPSロガーのデータを検証すると、ノーマル状態のX-ADVの最高速は、実測値(GPS速度)で約170km/h~177km/hの範囲に収まることが分かります。条件が良い場合、メーター読みで190km/h近くを指すこともありますが、これはあくまでメーター上の数値です。
知っておきたい「メーター誤差」の仕組み
すべての市販車は、法規(UN-R39等)により「実速度よりも高い速度を表示すること」が義務付けられています。実速度が100km/hの時、メーターは105km/h~110km/h程度を表示するのが一般的です。
X-ADVの場合もこの例に漏れず、高速域になればなるほど誤差(ハッピーメーター度合い)が大きくなる傾向があります。YouTubeなどで「最高速195km/h達成!」というようなサムネイルを見かけても、それはメーター読みの数値であり、実測では175km/h前後である可能性が高いと考えて間違いありません。
とはいえ、アドベンチャースタイルのアップライトなポジションで、実測170km/hオーバーというのは驚異的です。日本の高速道路の最高速度(120km/h区間)を余裕でカバーするどころか、その遥か上の領域までパワーが続いていることの証明でもあります。
高速道路での巡航回転数

「最高速が何キロ出るか」も男のロマンですが、実際のツーリングでより重要なのは「100km/hや120km/hで巡航している時に、どれだけエンジンが平和か」という点ですよね。ここに関しては、X-ADVは間違いなくクラス最高レベルの快適性を誇ります。
6速トップギアに入れた状態でのエンジン回転数は、おおよそ以下のようになります。
- 100km/h巡航時: 約3,700rpm ~ 3,900rpm付近
- 120km/h巡航時: 約4,600rpm ~ 4,800rpm付近
一般的なミドルクラスのバイクだと、100km/h巡航で5,000rpm〜6,000rpm回ることも珍しくありませんが、X-ADVはまるで四輪車のように低い回転数で淡々とクルージングします。しかも、最大トルクが発生するのが4,750rpm付近なので、100km/h〜120km/hという実用速度域が、ちょうどエンジンの力が一番湧き出る「おいしいゾーン」に重なっているのです。
これが何を意味するかというと、高速道路で追い越しをかけたい時、わざわざシフトダウンしてエンジンを唸らせる必要がないということです。アクセルをスッと開けるだけで、怒涛のトルクが車体を前に押し出し、余裕を持って追い越しを完了できます。この「頑張っていないのに速い」感覚は、長距離ツーリングでの疲労軽減に絶大な効果を発揮してくれますよ。
実燃費とツーリング時の航続距離
「パワーがあるバイクはガソリンを食う」というのが世の常識ですが、X-ADVにはその常識が通用しません。ベースとなっているNC750系エンジンは、究極の燃焼効率を目指した「ニューミッドコンセプト」に基づいて設計されており、その燃費性能は驚異的です。
実際のオーナーさんの声を平均すると、ストップ&ゴーの多い街乗りでも22km/L~25km/L、信号のない田舎道や高速道路の定速巡航であれば、リッター30km/L前後を叩き出すことも珍しくありません。750ccの大型バイクで、しかもオートマチック車でこの数値は、ちょっと信じられないレベルですよね。
燃料タンク容量は13.2Lと、アドベンチャーバイクとしては少し控えめに見えますが、実燃費を27km/Lと仮定して計算すると、航続距離は以下のようになります。
- 計算上の航続距離: 13.2L × 27km/L = 約356km
1回の給油で300km以上を確実に走破できるというのは、ロングツーリングにおいて非常に大きな武器になります。最高速が200km/h出るけれど150kmごとに給油が必要なバイクと、X-ADVのように給油回数を減らして淡々と走り続けられるバイク。
結果的に目的地に早く、そして疲れずに到着できるのはどちらか、答えは明白ですよね。X-ADVは「足の長い」真のグランドツアラーなんです。
X-ADVの最高速に関する制約と対策

ここまでX-ADVの良い面を中心に見てきましたが、機械である以上、物理的な限界や構造上の弱点も存在します。ここからは、最高速付近の領域で発生する現象や、カスタムによる変化など、少しマニアックな視点で「X-ADVのリアル」に迫ってみましょう。
速度リミッターカットの効果
日本国内仕様のX-ADVには、自主規制や安全上の配慮から、メーター読みで約180km/h付近(実測170km/h前後)で作動する速度リミッターが設定されています。「サーキット走行を楽しみたい」といった理由で、このリミッターを解除したいと考える方もいるかもしれません。
市場には「Special Agent」などのメーカーからリミッターカット装置が販売されていますが、正直なところ、X-ADVに関してはリミッターを解除しても最高速が劇的に伸びることはありません。
なぜなら、リミッターが効く前に、空気抵抗(走行風)の壁にぶつかってしまうからです。X-ADVの前面投影面積(バイクを前から見た時の面積)は大きく、さらにアップライトな乗車姿勢のため、空気抵抗係数(Cd値)はスーパースポーツのように良くはありません。約58馬力のパワーで押し切れる物理的な限界速度が、ちょうどリミッター作動速度付近にあるのです。
したがって、リミッターカットを行ったとしても、200km/hオーバーの世界が見えるわけではありません。あくまで「最高速付近での唐突な燃料カット(ガクガクする動き)を防ぎ、スムーズに吹け切らせる」ためのチューニングだと割り切るのが賢明です。
高速走行でウォブルが発生する原因
X-ADVの最高速について調べていると、必ずと言っていいほど目にするのが「ウォブル(Wobble)」や「ウィーブ(Weave)」と呼ばれる、高速走行時の車体の振れに関する話題です。「140km/hを超えたあたりからハンドルが小刻みに揺れ出した」という経験談は少なくありません。
この現象はX-ADVの欠陥というよりは、車両特性に起因する物理的な現象です。主な原因は以下の3つが複合的に絡み合っています。
- タイヤの剛性不足: 純正装着されているタイヤは、未舗装路も走れるブロックパターン風のデザインです。このタイヤのブロックが高速回転時に変形し、振動の発生源となることがあります。
- 空力特性とトップケース: 車体後方に大型のトップケースを装着している場合、後方でカルマン渦などの乱気流が発生し、車体を左右に揺さぶります。
- サスペンションストローク: X-ADVは悪路走破性を確保するため、サスペンションが長く柔らかめに設定されています。これが高速域でのピッチング(前後動)を誘発しやすいのです。
対策としては、まずタイヤを「完全オンロード向け(例:ミシュラン ROAD6など)」に交換することが最も効果的です。トレッド剛性が高いタイヤにするだけで、高速安定性が劇的に改善したという報告が多数あります。また、高速道路を走る際は、風圧に耐えようとしてハンドルを強く握りしめない(ニーグリップで体を支える)ことも、振れを抑える重要なテクニックですね。
スプロケット変更による速度変化
「もっと加速を鋭くしたい」あるいは「もっと回転数を下げてまったり走りたい」という理由で、スプロケット(チェーンを駆動する歯車)の丁数を変更するカスタムも存在します。
例えば、リアのスプロケットを大きく(ショート化)すれば、加速力はさらに増しますが、エンジン回転数が上がりやすくなるため燃費は悪化し、最高速も低下します。逆に小さく(ロング化)すれば、巡航回転数は下がりますが、加速が鈍くなり、パワー不足で最高速に到達しなくなる可能性があります。
そして、X-ADVでスプロケット交換をする際に絶対忘れてはいけないのが、「スピードメーターの誤差」です。X-ADVの車速センサーは、ホイールの回転ではなく、トランスミッション内部の回転数を拾っています。そのため、スプロケットを変えて減速比が変わると、ECUが計算する速度と実際の速度にズレが生じてしまうのです。
これを放置すると、メーターがデタラメな数字を表示するだけでなく、DCTの変速タイミングがおかしくなったり、トラクションコントロールが誤作動したりする原因になります。スプロケットを変える場合は、「SpeedoHealer(スピードヒーラー)」のような補正デバイスの導入が必須セットになると覚えておきましょう。
DCTモード選択と加速の関係
最後に、X-ADVのポテンシャルを100%引き出すための、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)のモード選択についてお話しします。状況に合わせてモードを使い分けることで、このマシンの性格はガラリと変わります。
Dモード(ドライブモード)
燃費と静粛性を最優先するモードです。2,000rpm台で次々とシフトアップしていき、あっという間に6速に入ります。街中を流すには快適ですが、いざ加速しようとするとキックダウンのタイムラグがあり、最高速アタックには不向きです。
Sモード(スポーツモード)
エンジン回転数を高めに維持するモードで、レベル1〜3まで調整可能です。S3モードにすると、減速時にはブリッピング(空吹かし)を入れて積極的にシフトダウンし、加速時にはパワーバンドまで引っ張ってくれます。ワインディングや高速道路での合流では、このSモードに入れておくのが基本です。
MTモード(マニュアルモード)
そして、最高速や0-100km/h加速で最速タイムを叩き出すなら、左手のスイッチで変速操作を行うMTモード一択です。自動変速では安全マージンを取って少し早めにシフトアップしてしまうことがありますが、MTモードならレブリミット直前の7,000rpmギリギリまで引っ張ることができます。
「スクーターだからオートマ任せで楽ちん」というだけでなく、「必要な時には自分でギアを選んで、エンジンの限界性能を引き出せる」こと。これこそが、X-ADVが単なるスクーターではなく、操る喜びを持ったモーターサイクルである証なんですね。
【総括】X-ADVの最高速性能
今回は、X-ADVの最高速性能や加速のメカニズムについて、かなりマニアックな視点から解説してきました。長くなりましたので、重要なポイントを改めて整理しておきましょう。
- 最高速度: GPS実測で約170km/h~175km/h(メーター読みではそれ以上)。空気抵抗の壁があるため、リミッターカットの効果は限定的。
- 加速性能: 0-100km/h加速は約5.0秒。スポーツカー顔負けのダッシュ力を持ち、DCTによるダイレクトな加速感は病みつきになるレベル。
- ライバル比較: 直線加速と悪路走破性はX-ADV、コーナリング性能はTMAX。キャラクターは明確に異なる。
- 巡航性能: 100km/h巡航で4,000rpm以下という低回転により、振動が少なく燃費も良好。航続距離は350kmを超え、ツアラーとしての資質は極めて高い。
記事を通じてお伝えしたかったのは、X-ADVは単に「最高速を競うためのバイク」ではないということです。しかし、「いざとなればスポーツバイクをカモれるだけの加速力を持ちながら、どこまでも快適に走り続けられる」という余裕こそが、このマシンの真の価値なのだと思います。
「遅いんじゃないか?」という不安で迷っているなら、その心配は無用です。むしろ、アクセルをひと捻りした瞬間に湧き上がる野太いトルクと、DCTが奏でる変速のリズムに、きっとヘルメットの中でニヤリとしてしまうはずですよ。この唯一無二のクロスオーバーマシンで、ぜひ新しいバイクライフの扉を開いてみてください。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。この記事が、あなたのX-ADV選びの参考になれば嬉しいです。
